55.俺は一体 ページ8
「今度コーヒー豆を買いに行く時に、私がちゃんと説明するから」
「……ああ。そうしてくれ」
いたたまれない空気。すると、私の少し前を歩いていた山姥切君が急にピタリと歩みを止め振り返った。
「こんな子供と関係を待っているなんて勘違いされて、アンタは嫌だろう」
「え」
すまないな、と返す彼にむしろ私の方が申し訳なく思う。だってこんなオバさんと付き合っていると見られるなんて、不愉快極まりないだろうし。
「こっちこそごめんね」
「いや。主が謝ることじゃない」
てっきり山姥切君は怒っているものだと勘ぐっていたのだが、まさか私の
山姥切君はビクリと体を跳ねさせ、抱いていたコーヒー豆の入っている袋を慌てて抱え直す。
「なんだ突然……！」
「ううん、なんでもないよ！ ほら、次のお店に行こう！」
満面の笑みでそう告げると、彼は拍子抜けした様子で「わかっている」と同じく微笑んだ。
◆◆◆
時間というものはあっという間に過ぎてしまう。そんな当たり前かつ聞き飽きたフレーズが図らずも頭をかすめた。
夏も中盤を終え、次第に小・中学生が夏休みの課題に向き合うことを余儀なくされる時期に突入した。私は無論、宿題は最終日にやるタイプだった。
まあそんな余談は置いといて、私が今真剣に考えなければならないのは、これまで散々あやふやにごまかしていた“あの件”だ。
──……山姥切君へのお給料。
彼はここで働く前にこう言った。
賃金ならココア１杯で十分だ。だからあんたの側にいさせてくれ、と。
その時は思わず脊髄反射的な何かで受諾してしまったのだけれど、これは普通に考えて法と世間と道徳が許さない。
後になって、感情に身を任せて何を速決してるんだ、と自分を恐ろしく責めた。そりゃもう責めた。なぜなら、当時この店に従業員を雇うほど金銭的に余裕は無かったからだ。
しかしいざ山姥切君が働いてみると、売上はうなぎ上り、仕事の効率化、私の目の保養という思いがけない恩恵を
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ツキノ(プロフ) - この作品が大好きです。。もう何周もしてます…こんな素敵な作品をありがとうございます！ (2022年1月17日 0時) (
レス) @page50 id: b34edaf8ba (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 最期まで清く上品な作品でした。素敵な作品を読めて幸せです！ (2020年5月6日 14時) (レス) id: 83655268b3 (このIDを非表示/違反報告)
テクノ(プロフ) - とても感動しました。皆が幸せになってくれて良かった。 (2019年3月21日 1時) (レス) id: 5d0adffebe (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 桜餅さんさん» 気に入っていただけて嬉しいです！紳士でロイヤルな一期君も勿論ですが、少しヘタレだといいなという私の願望を詰め込みました（笑）いえいえ、こちらこそ楽しいリクエストありがとうございます！ (2017年9月23日 15時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
桜餅さん(プロフ) - こういう一期さん待ってましたありがとうございます（遺言） (2017年9月23日 14時) (レス) id: 75edde69e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年8月12日 0時
