90.【番外編】困りますお客様！�� ページ45
「なんだ騒がしいぞ」
スタッフルームから顔を出したのは、先程出勤したばかりの山姥切君。彼はシャツの袖をまくりながら、カウンター席に座る平安刀を見てあからさまに「げっ」と不快感を見せた。
「……来ていたのかアンタ達」
「おお、山姥切もいるという話は本当だったのか。いやはや驚いた」
「ほう。そういえば山姥切の淹れる茶もなかなかに美味いものだったな。大包平も絶賛していたぞ」
あはははは、と呑気に笑う二人をよそに、未だに暗い面持ちの小狐丸はもう一度確かめるように「稲荷寿司はやはり無いのですか？」と私に問うた。
それを聞いた山姥切君はきょとんとこちらを見つめる。
「稲荷寿司？ そんなものメニューにあったか？」
私は首を横に降る。すると察しの良い山姥切君はしばらく考えるような素振りを見せてから、やがて小さく溜め息を吐いた。
「おいジーさん共。面倒なクレームはやめてくれないか。メニューに書かれているもの以外は無いんだ」
閑静なひと時。
すると──、
「そうかそうか、ジジィに食わせる芋けんぴは無いとな……」
「俺はただ茶が飲みたいだけなんだが……」
「小狐ゆえ、稲荷寿司が無いと生きられないのです」
しくしく、そんな擬音が宙を舞っているような気がした。精神年齢は軽く千を越えるはずのメンバーが、ここにきて脇目も振らず泣き出してしまったのだ。
さすがのそれには山姥切君も大慌て。
「い、いい歳した大人が……！」
本来ならメニュー外の注文は受け付けない。しかし、彼らに今ここで泣かれては他のお客様にも迷惑がかかる。致し方ない。こうなったら手段はひとつ。
「山姥切君、ごめんだけど買い出しをお願いしてもいいかな？」
「別に構わないが……アンタまさか」
「うん。芋けんぴと稲荷寿司の材料を買ってきて欲しいの。あと日本茶も」
「そこまでする必要があるか？ メニューには無いんだぞ？」
「でも前世で散々お世話なったし、時間があれば作れなくもないものだから、蔑ろにはできないよ」
「……まあ、主がそう言うなら」
不本意そうではあったが、山姥切君はすぐに店を出て行った。平安の刀に振り回されるのは昔も今も変わらないなぁ、なんて。
それから数十分後。なるべく急ぎでね、と付け足して見送ったせいか、買い物袋片手にスーパーから帰って来た山姥切君は汗だくでめちゃくちゃしんどそうだった。
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ツキノ(プロフ) - この作品が大好きです。。もう何周もしてます…こんな素敵な作品をありがとうございます！ (2022年1月17日 0時) (
レス) @page50 id: b34edaf8ba (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 最期まで清く上品な作品でした。素敵な作品を読めて幸せです！ (2020年5月6日 14時) (レス) id: 83655268b3 (このIDを非表示/違反報告)
テクノ(プロフ) - とても感動しました。皆が幸せになってくれて良かった。 (2019年3月21日 1時) (レス) id: 5d0adffebe (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 桜餅さんさん» 気に入っていただけて嬉しいです！紳士でロイヤルな一期君も勿論ですが、少しヘタレだといいなという私の願望を詰め込みました（笑）いえいえ、こちらこそ楽しいリクエストありがとうございます！ (2017年9月23日 15時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
桜餅さん(プロフ) - こういう一期さん待ってましたありがとうございます（遺言） (2017年9月23日 14時) (レス) id: 75edde69e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年8月12日 0時
