81.難しい ページ34
……もう、自分一人でどうにかできるとは思えなかった。私は管狐を呼び出し、この霊力の枯渇について全てを話した。そして最後にどうすればいいのか、と付け足して。
「なるほど」
管狐は表情を変えることなく、こう言い放った。
「審神者様。霊力が低下するという事例は非常に稀でございます。……なぜもう少し早く相談してくださらなかったのですか」
「……本当にごめんなさい。でも“稀”ってことは、前にも似たような審神者がいたということでしょう？」
「ええ」
「その方はどうなさったのですか？」
「……今までに霊力が低下してしまった方々は、皆────」
数時間ほど、過ぎただろうか。
管狐がいなくなってからも、私はずっと座ったまま己の行く先を考え続けていた。
どうして私が。ここまで頑張ってきたのに。
努力してきたつもりだった。何よりも刀剣達を第一に考え、誰一人として折ることなくここまで走ってきた。
それなのに、それなのに。
一体なんの報復なのだろうか。どうして矛先が私に向けられたのだろうか。怒りにも似た疑問が次々と湧き起こった。
──“……今までに霊力が低下してしまった方々は、皆……審神者を辞めてらっしゃるのですよ”。
対処法は無い。
突きつけられた結論は、あまりにも酷だった。
それからまたしばらく経ち。
──もう、言ってしまおう。これ以上は隠しきれない。
私は大広間に刀剣男士全員を呼び集め、自分の霊力が低下していること、そしてその対処法が現時点では無いことを全部説明した。
驚く者、悲しむ者、受け止める者、反応は様々だったが、誰も私を責めはしなかった。
手入れもできない。刀装も作れない。鍛刀などもってのほか。そんな役立たずの審神者を、それでも彼らは“主”として慕ってくれたのだ。
私は初めて泣いた。ありがとう、ありがとう、と何度も何度も繰り返して。
そして同時に決意した。
……審神者を引退しよう。
私の霊力が完全に消失すれば、刀剣達の顕現は解かれてしまう。本末転倒を避けるため、私はこの本丸を新しい審神者に引き継いでもらうことにしたのだ。
これを初めて山姥切に告げた時、彼は今にも泣き出しそうに顔を歪めた。ごめんなさい。でもこれが本丸のためなんです。
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ツキノ(プロフ) - この作品が大好きです。。もう何周もしてます…こんな素敵な作品をありがとうございます！ (2022年1月17日 0時) (
レス) @page50 id: b34edaf8ba (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 最期まで清く上品な作品でした。素敵な作品を読めて幸せです！ (2020年5月6日 14時) (レス) id: 83655268b3 (このIDを非表示/違反報告)
テクノ(プロフ) - とても感動しました。皆が幸せになってくれて良かった。 (2019年3月21日 1時) (レス) id: 5d0adffebe (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 桜餅さんさん» 気に入っていただけて嬉しいです！紳士でロイヤルな一期君も勿論ですが、少しヘタレだといいなという私の願望を詰め込みました（笑）いえいえ、こちらこそ楽しいリクエストありがとうございます！ (2017年9月23日 15時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
桜餅さん(プロフ) - こういう一期さん待ってましたありがとうございます（遺言） (2017年9月23日 14時) (レス) id: 75edde69e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年8月12日 0時
