79.見つけ出す。 ページ32
目眩に耐えきれず頭を抑えた。
辛い。
ただその感情だけが、ぐるぐると渦を巻く。
「……っ！」
不意に顔を持ち上げられたかと思うと、視界いっぱいに山姥切君が映り込んでいた。翡翠の瞳が、私をじっと捉えている。
「ごめ、なさい……っ」
「主」
「ごめんなさいっ！」
「泣かないでくれ。俺達は主を追い詰めたいんじゃない」
「違う、違うの！」
全部、思い出してしまった。
私が何者であったのかを。
◆◆◆
はっ、と息苦しさから目覚めた。
胸を這いずり回るような酷い感覚はまだ残っていて、涙で濡れる頬を乱暴にパジャマの袖で拭った。
ここは現実の世界。見飽きたベッドも家具も、確かにここにある。ただ違うのは、同じベッドに入っていたはずの山姥切君が、机の隣で正座したまま私を見ていることだ。
目つきは、あの夢と同じ。
「山姥切君、思い出しちゃった」
放ったセリフは軽いものの、溢れる雫を止められるほど精神は安定してなくて。山姥切君は表情を変えずに「そうか」とだけ返した。
「主、ひとつだけ教えてくれ」
「なに？」
「どうしてあの時、俺達を信じてくれなかったんだ？」
そっか。
君はずっとその疑問を抱いたまま私の側にいてくれたんだね。ごめんね。すぐに思い出せなくて。あの時、ちゃんとしたお別れができなくて。
そして、私は思い出した全ての記憶を、ぽつりぽつりと少しずつ言葉として紡いでいった。あの日あの時、本丸でなにがあって、どうして“審神者”で無くなってしまったのかを。
「……ねぇ、山姥切君。君がこの世界で私と初めて会った時、なんて言ったか覚えてる？」
「いや」
「『アンタは、何者だ？』って尋ねたんだよ。その時は意味がわからなくて答えられなかったけど、今なら胸を張って言える気がするんだ」
私は山姥切君のマネをしてベッドの上で正座する。パジャマ姿だから不恰好だけど、大きく深呼吸をして笑いながら口を開いた。
「──私は百合。大和国の審神者だった」
◆◆◆
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ツキノ(プロフ) - この作品が大好きです。。もう何周もしてます…こんな素敵な作品をありがとうございます！ (2022年1月17日 0時) (
レス) @page50 id: b34edaf8ba (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 最期まで清く上品な作品でした。素敵な作品を読めて幸せです！ (2020年5月6日 14時) (レス) id: 83655268b3 (このIDを非表示/違反報告)
テクノ(プロフ) - とても感動しました。皆が幸せになってくれて良かった。 (2019年3月21日 1時) (レス) id: 5d0adffebe (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 桜餅さんさん» 気に入っていただけて嬉しいです！紳士でロイヤルな一期君も勿論ですが、少しヘタレだといいなという私の願望を詰め込みました（笑）いえいえ、こちらこそ楽しいリクエストありがとうございます！ (2017年9月23日 15時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
桜餅さん(プロフ) - こういう一期さん待ってましたありがとうございます（遺言） (2017年9月23日 14時) (レス) id: 75edde69e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年8月12日 0時
