76.いようと ページ29
「落ち着け落ち着け！ 相手は高校生！」
とりあえずドライヤーで髪を乾かす間に、この緊張をほどこうと試みたのだが結果は不毛。
山姥切君に「顔が赤いぞ」なんて指摘されたが、私は「お風呂上がりだからね！」と声を裏返すので精一杯だった。
…………いよいよ、就寝である。
先にベッドに入っていた山姥切君の隣に潜り込む私。予想通りかなり狭いが、彼とこんなにも密着するなんてことは予想外だ。
「寒くないか主」
「う、うん」
すぐ頭上から聞こえる声。互いに背を向ければいいものを、よりによって向かい合うカタチになってしまった。バカ野郎、私。
「……っ！？」
背中に手を回され、思わずびくつく。
ちょ、待って待って！
心臓の音が聞こえてしまったらどうしよう、なんて危機感を抱いた私は、即座に体をよじらせて山姥切君と距離を置いた。
それが不満なのか、また抱きつく山姥切君。
「ねぇっ！」
「なんだ？」
「まんばちゃんも一緒に寝よっか！？」
「は？」
これ以上は体がもたないと判断し、すぐにミント色のクマ人形、通称まんばちゃんを取り出し私と山姥切君の間に押し込んだ。
「これじゃ余計に狭いだろ」
「でもこれは山姥切君の一部みたいなものだから、いいでしょ？」
「……邪魔だ」
「あっ！」
無情にも投げ飛ばされたまんばちゃん。
タンスに顔をぶつけて可哀想だ。
「主」
「なに？」
「そんなに俺と寝るのが嫌なのか」
「えっと、そういう訳じゃないんだけど……緊張しちゃって。山姥切君はどうして平気なの？」
さっきから淡々と、通常運転な彼。
しかし返ってきたのは重い重い溜息だった。
「俺だって緊張してる。ほら」
手を握られ、そのまま彼の胸に当てられる。すると、言動からはまるで想像もつかない程、その心臓はバクバクと鳴り響いていた。
私だけが変に意識していると思ってた。
でも山姥切君も同じなんだ。ちょっと安心。
なぜだか、その瞬間とてつもない睡魔に襲われて。今まで張り詰めていた糸が突然ぷつんと千切れるように、私は眠りの世界に落ちていった。
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ツキノ(プロフ) - この作品が大好きです。。もう何周もしてます…こんな素敵な作品をありがとうございます！ (2022年1月17日 0時) (
レス) @page50 id: b34edaf8ba (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 最期まで清く上品な作品でした。素敵な作品を読めて幸せです！ (2020年5月6日 14時) (レス) id: 83655268b3 (このIDを非表示/違反報告)
テクノ(プロフ) - とても感動しました。皆が幸せになってくれて良かった。 (2019年3月21日 1時) (レス) id: 5d0adffebe (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 桜餅さんさん» 気に入っていただけて嬉しいです！紳士でロイヤルな一期君も勿論ですが、少しヘタレだといいなという私の願望を詰め込みました（笑）いえいえ、こちらこそ楽しいリクエストありがとうございます！ (2017年9月23日 15時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
桜餅さん(プロフ) - こういう一期さん待ってましたありがとうございます（遺言） (2017年9月23日 14時) (レス) id: 75edde69e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年8月12日 0時
