75.例えどこに ページ28
◆◆◆
「えっと……それで、やっぱりどうしてもウチに泊まるの？」
「泊まる」
「私のベッドシングルサイズだから、どう頑張っても入らないと思うよ？」
「床で寝る」
「しかも私寝相も悪いから、もしかしたら床に落っこちて君に怪我させちゃうかも」
「部屋の隅で座って寝る」
「で、でも、いきなりお泊まりなんて山姥切君のご両親にも迷惑がかかるでしょ？」
「親の承諾は得ている」
「行動早いなっ！」
私は頭をかきながら苦笑いする。
山姥切君はというと至極真剣な面持ちで、今夜は絶対に私から離れない、と最近の乙女ゲームのようなことを言っていた。
異論は断固認めない、そんな強い眼差しで見つめられれば、私だってもうどうしたらいいのかわからなくなる。何かと理由をつけては薄っすら拒絶してみるものの、先ほどのようにサラリとかわされるだけだった。
ああ多分、これはマジだ。目がマジだ。
キリッと眼光を放ちながらこちらを見る様は、人間国宝に認定されてもおかしくないレベルのイケメンで、私は余計に言い返せなくなってしまう。
そして本当に渋々、首を縦に振る他なかったのだった。
山姥切君の性格上、変なマネをするとは到底思わない。じゃあ何をそんなに懸念しているのかというと、やはり寝る場所である。
述べた通り、我が家のベッドは狭い。
いや、一人暮らしの女が１人で寝る分には全く問題はないが、それを２人、しかも片方は男となると話は別だ。間違いなくはみ出る。何かが。
かと言って山姥切君を床で眠らせるわけにはいかない。勿論部屋の隅っこにも。まあ私が今夜だけ窮屈な思いを我慢すればいいし、山姥切君も文句は言わないだろうから、ここは穏便に済まそう。
そう自分に言いつけた。
そう言いつけたはずだった。
「き、緊張する……！」
現在お風呂場にて、訳のわからない動悸に苦しむ私。職を突然失ったショックで逆にテンションが上がったまま、私はへらへら笑いながら山姥切君とアパートに帰って来たのだ。
山姥切君はもうすでにお風呂を済ませていたようなので、今は私のベッドでごろごろと女性向け雑誌を読んでいるだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 287人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツキノ(プロフ) - この作品が大好きです。。もう何周もしてます…こんな素敵な作品をありがとうございます！ (2022年1月17日 0時) (
レス) @page50 id: b34edaf8ba (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 最期まで清く上品な作品でした。素敵な作品を読めて幸せです！ (2020年5月6日 14時) (レス) id: 83655268b3 (このIDを非表示/違反報告)
テクノ(プロフ) - とても感動しました。皆が幸せになってくれて良かった。 (2019年3月21日 1時) (レス) id: 5d0adffebe (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 桜餅さんさん» 気に入っていただけて嬉しいです！紳士でロイヤルな一期君も勿論ですが、少しヘタレだといいなという私の願望を詰め込みました（笑）いえいえ、こちらこそ楽しいリクエストありがとうございます！ (2017年9月23日 15時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
桜餅さん(プロフ) - こういう一期さん待ってましたありがとうございます（遺言） (2017年9月23日 14時) (レス) id: 75edde69e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオト
| 作成日時：2017年8月12日 0時
