70.言わせて ページ23
雛山さんじゃない？ まさか、そんなわけない。
「その紙、アナタが山姥切君に渡したラブレターと同じ紙が使われてるんだけど……それでも見覚えはないの？」
「ああ、確かによく見たら同じ種類ですね」
裏と表を繰り返し見ながら、雛山さんは軽い口調で言う。まるで自分には関係ないように。私はそれに腹が立って、気がつけば思い切り机を叩いていた。
びくりと体を固くさせる雛山さん。
「山姥切君にフラれたからって私に嫌がらせはやめてちょうだい！ 本当に怖い思いをしてるんだよ！？」
「嫌がらせ……？ 私が？」
「カフェや私の家の前に花を置いたのも全部アナタなんでしょ！？」
「えっ、待って百合草さん。違います！」
「違うって何が！？」
「あのラブレターを書いたのは私じゃありません！！」
思わず掴み掛かりそうになっていた手が動きを止める。途端に頭の中が真っ白になって、それでも彼女の言葉は耳元でこだましていた。
雛山さんじゃない……？
じゃあ、あれは誰が書いたの？
「あれはここの店長──、柳香織さんが書いたんですよ」
と、雛山さんは黒百合を見つめながら困り顔で言った。
どこにも差出人が記されていなかったラブレター。だからてっきり、それを持っていた雛山さんが書いたものだと思っていた。私も、山姥切君も。
「香織さんにこの前、ラブレターを届けてほしいって頼まれたんです。百合草さんのカフェで働いている、国広君……？ ていう人に。とくに断る理由もなかったから引き受けたんですけど、返事まで聞いてきてほしいって言われた時はさすがに驚きましたね」
そうだ。ラブレターが届いた次の日にはもう、山姥切君は雛山さんに直接会って断ったはずだ。つまりあれも、雛山さんは代理人として来ていただけ？
パズルのピースが綺麗に繋がっていく。
山姥切君に恋をしているのは、彼女じゃなくて香織さんなんだ。いつから、とか、きっかけは、とか、今はそんなものどうだって良かった。
ただ香織さんに会って話をしたい。あの人は本当に素敵で優しい人なんだ。付き合いも長いからわかる。もしかしたらこの黒百合も、実は香織さんの悪ふざけかもしれない。絶対に本人の口から言わせるんだ。
からかってるだけだよ、って。
だって、じゃなきゃ……私が辛い。
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ツキノ(プロフ) - この作品が大好きです。。もう何周もしてます…こんな素敵な作品をありがとうございます！ (2022年1月17日 0時) (
レス) @page50 id: b34edaf8ba (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 最期まで清く上品な作品でした。素敵な作品を読めて幸せです！ (2020年5月6日 14時) (レス) id: 83655268b3 (このIDを非表示/違反報告)
テクノ(プロフ) - とても感動しました。皆が幸せになってくれて良かった。 (2019年3月21日 1時) (レス) id: 5d0adffebe (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 桜餅さんさん» 気に入っていただけて嬉しいです！紳士でロイヤルな一期君も勿論ですが、少しヘタレだといいなという私の願望を詰め込みました（笑）いえいえ、こちらこそ楽しいリクエストありがとうございます！ (2017年9月23日 15時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
桜餅さん(プロフ) - こういう一期さん待ってましたありがとうございます（遺言） (2017年9月23日 14時) (レス) id: 75edde69e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年8月12日 0時
