50.アンタが ページ3
あれれ、嫌な空気だな。
余裕ある鶴丸君の笑みが
「お客様、お会計はあちらです」
「なっ、強制的に俺を帰すつもりか！」
「あまり駄々をこねるようでしたら防犯用のカラーボールを投げつけますよ」
さらりと敬語でヤバイことを言ってのける山姥切君。本当にやりかねない目をしていたので、流石の鶴丸君も渋々「降参だ」と溜め息をついた。
「それじゃあな、主。また次の機会に……」
「アリガトウゴザイマシター」
「おい！ まだ喋ってる最中だろ！」
さっさと帰らせたい山姥切君と、最後の抵抗を見せる鶴丸君。ドアを押したり引いたりと忙しそうである。おかげでドアベルはカランカランと大暴れだ。
なんだかこの前の大和守君と加州君ぽいなー。
ようやく決着がつき、ドアベルの音が止まった頃には、山姥切は肩が激しく上下に揺れるほど疲れ切っているのだった。
◆◆◆
「あれ？」
なんだろうこれ、と私はその場にしゃがみこんだ。現在時刻は夜の１０時。戸締りのため店の扉に鍵をかけていた際、足元の違和感に気づいて冒頭にいたる。
暗い中目を凝らすと、花束と白い紙が置かれていた。
もしかして山姥切君の仕業だろうか、と思わず周辺へ視線を向けたのだが、そういえば彼の退勤時間は９時なのでもうとっくに家に着いてるはず。彼がわざわざこんなことをするとは考えられないし。
じゃあ、誰かのイタズラ？
そっと手を伸ばし、紙に記された文字を読む。
【アネモネ】
赤、白、紫……この色とりどりの花の名前らしい。
ファン(？)から山姥切君宛へのプレゼント？ いやでも、大切な贈り物を店先の地面に無造作に置きっ放しにするか普通？ 営業時間内ならお客さんの出入りも多いから、踏まれる可能性だってある。
それでもこの扉の前に置かれていた。
──……ひょっとして、私宛？
私がこの時間帯に１人で店の戸締りをすると知っていて、ここに置いていった？
うーん。確かに花は綺麗なんだけど。
「贈り主が不明じゃあ……ちょっと怖いよねぇ」
ましてやこんな夜遅くに。絶対に有り得ないとはわかっていても、ストーカーとかそういった類の存在を考えてしまう。
アネモネ、と一言だけ書かれた紙。
その筆跡に見覚えがあるのは、ただの思い過ごしだと願いたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 287人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツキノ(プロフ) - この作品が大好きです。。もう何周もしてます…こんな素敵な作品をありがとうございます！ (2022年1月17日 0時) (
レス) @page50 id: b34edaf8ba (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 最期まで清く上品な作品でした。素敵な作品を読めて幸せです！ (2020年5月6日 14時) (レス) id: 83655268b3 (このIDを非表示/違反報告)
テクノ(プロフ) - とても感動しました。皆が幸せになってくれて良かった。 (2019年3月21日 1時) (レス) id: 5d0adffebe (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 桜餅さんさん» 気に入っていただけて嬉しいです！紳士でロイヤルな一期君も勿論ですが、少しヘタレだといいなという私の願望を詰め込みました（笑）いえいえ、こちらこそ楽しいリクエストありがとうございます！ (2017年9月23日 15時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
桜餅さん(プロフ) - こういう一期さん待ってましたありがとうございます（遺言） (2017年9月23日 14時) (レス) id: 75edde69e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオト
| 作成日時：2017年8月12日 0時
