61.俺はアンタを ページ14
「別に。アンタが好きな呼び方をすればいい」
じゃあまんばちゃんで、と私はぬいぐるみの頭を撫でる。ミント色って何だか珍しい気もするけど、よく見ると山姥切君の瞳と似た色なんだよね。
親近感が湧くなぁ。
すると、急に山姥切君の視線がある一点に止まった。とてつもなく嫌な予感がしてそれを辿ると、案の定私の手の平にベタベタと貼られている絆創膏に行きついて。
「なんだそれは」
トーンの低くなった問いかけ。
笑ってごまかそうものなら一瞬で消されそうだ。
「人とぶつかって、転んじゃった」
「……」
あはは、と目を逸らすと山姥切君はおもむろに私の手に触れ、絆創膏を優しく何度かなぞり、そして小さい溜め息をついた。
「最近の主は注意力が散漫している。あまり俺を心配させないでくれ」
「う、うん。今度から気をつけるね」
本当にわかってるのか、そんな目線に私は大きく首を縦に振る。もうどっちが大人なのかわからなくなってきたよ。
「………ねぇ、まんばちゃん」
「なんだ」
「え？ いや、今のは……」
クマちゃんを呼んだつもりだったんだけど。
思わず反射で返事をしてしまったのか、彼は少しきょとんとして、そして一気に頬を紅潮させた。
「まっ、紛らわしいことを言うな！」
「えぇ〜……私、別に普段から“まんばちゃん”なんて呼ばないでしょ。今のは君に過失があると思うなぁ」
「うるさい！」
余程恥ずかしいのか、山姥切君は私のベッドから枕を手に取り、隠れるように顔を埋めた。あの、ちょっと、汚い訳ではない(と思う)けど気になるから切実に止めて欲しい。
結局、枕から顔を上げるまでに５分かかった。
「──主、折角の休日を邪魔して悪かったな」
しばらく談笑した後、山姥切君がそう切り出した。時計を見てみると、彼が訪問してから随分と時間が経っていることに気づく。
「ううん。それよりもプレゼント本当にありがとう」
「気に入ってくれたならいい」
ふっ、と優しく笑う山姥切君を玄関まで見送る。しかし扉を開けた時、なにかにぶつかったらしい彼は「ん？」と声を漏らした。不思議に思って横から顔を出すと──、
「スイセン？」
そう書かれた小さな紙と、白色の花束が置かれていた。
ぞっと背筋が凍る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 287人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツキノ(プロフ) - この作品が大好きです。。もう何周もしてます…こんな素敵な作品をありがとうございます！ (2022年1月17日 0時) (
レス) @page50 id: b34edaf8ba (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 最期まで清く上品な作品でした。素敵な作品を読めて幸せです！ (2020年5月6日 14時) (レス) id: 83655268b3 (このIDを非表示/違反報告)
テクノ(プロフ) - とても感動しました。皆が幸せになってくれて良かった。 (2019年3月21日 1時) (レス) id: 5d0adffebe (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 桜餅さんさん» 気に入っていただけて嬉しいです！紳士でロイヤルな一期君も勿論ですが、少しヘタレだといいなという私の願望を詰め込みました（笑）いえいえ、こちらこそ楽しいリクエストありがとうございます！ (2017年9月23日 15時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
桜餅さん(プロフ) - こういう一期さん待ってましたありがとうございます（遺言） (2017年9月23日 14時) (レス) id: 75edde69e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオト
| 作成日時：2017年8月12日 0時
