33.〃 ページ35
もう少し早く到着していれば、と後悔の念に押しつぶされそうになったとき、前方からやって来る時間遡行軍の存在を捉えた。主殿を追っているのだろう。
私は刀の柄をグッと握り締めた。
「……お覚悟」
◆◆◆
──そっか。
と、乱は呟いた。
「ボク……あるじさんに怪我させちゃったんだね」
「今はもう手当ても済んでるから、心配することはないよ」
「それに、結局ボクの方が守られてたみたいだし」
「……」
「主を助けられない刀なんて役立たずにも程があるよ。きっとあるじさんもボクに幻滅してる」
「乱、やめなさい」
これ以上自分を責めるな、という意味を込めて私は乱を強く睨んだ。それに一瞬驚いたように見開かれた空色の瞳は、戸惑い気味に逸らされる。
「主殿が本丸に帰って来る間、ずっと何と言っていたかわかるかい？」
「……ボクを刀解する、とか」
「いいや。早く乱を手入れ部屋へ運んで、と。ボロボロになったご自分よりも、お前の怪我の方を心配していらっしゃった」
折角の日に怖い思いをさせてしまった、こんな時に手伝い札がない、お願いだから折れないで。今だ乾ききっていない血を拭いながら、自身を後回しにして乱の手入れに専念した主殿。
私達刀は手入れさえすればキズは癒える。
けれど、“人”はそう簡単に出来ていない。
──乱、この意味がわかるかな？
じわり、滲む瞳。
刹那……廊下を走る足音が近づいて来て、手入れ部屋の襖が勢いよく開かれた。そこで仁王立ちするのは、肩を上下に揺らしてゼェゼェと息をする主殿で。
「乱っ！ 目が覚めたの！？」
「あ、るじさ……ん」
「あぁっ、良かったぁ〜！ ごめんね今丁度手伝い札きらしてて！ 本当なら一瞬で終わらせたかったんだけど……って、うわっ！」
安静にしてなさい、と私が声をかけるよりも先に、乱は布団から起き上がって主殿に抱きついた。とっさの出来事に主殿は足をよろけさせていたが、その手はしっかりと乱の背中に回されている。
「ごめんねっ、本当にごめんね！」
「私は大丈夫だから。ほら泣かないの」
「ボク、もっと強くなるからっ……」
「うん。期待してる」
「あるじさんのことっ、ちゃんと守るから！」
それは、決意を含んだ目。
……遂にきてしまったか。私は目を伏せた。
「だからお願い。修行に行かせて」
(主殿は少し寂しそうに、けれど嬉しそうに微笑んだ)
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アオト(プロフ) - 心魄さん» 返事が遅れてしまいすみません〜〜！お褒めいただき大変嬉しく思います。これからも更新頑張りますので、応援よろしくお願いいたします！コメントありがとうございました。 (2017年5月29日 22時) (
レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
心魄 - 面白いですね！(上から目線ぽくてすみません！)これからも更新頑張ってください(*^▽^)/★*☆♪この作品大好きです♪ (2017年5月22日 21時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - あやとり猫さん» コメントありがとうございます！さ、最高ですと……！？嬉しいです感激です！夢主ちゃんが気に入っていただけて良かったです。なるべく標準的な女の子にしようと心がけているので共感していただけると幸いです！はい、これからも更新頑張ります。応援感謝です！ (2017年3月22日 22時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
あやとり猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!えっえっなにこれ最高ですか(最高です) 演練での完全勝利Sおめでとう夢主ちゃん!!(( 夢主ちゃんが私の化身なんじゃないかってぐらいそっくりです(笑) これからもゆるりと頑張ってください(*^^*)更新お待ちしております!! (2017年3月21日 14時) (レス) id: ace5edcb89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年1月8日 15時
