32.〃 ページ34
──────…………
────……
──……
ここは本丸の手入れ部屋。
その中央で静かに眠る弟の乱藤四郎を、私は口を真一文字に結んだまま、側で眺めていた。
「…………ん」
伏せられていた、乱の瞼が開かれる。
そしてキョロキョロと不思議そうに黒目を右往左往させ、やがて自らの状況を察したのか、悔しそうに下唇を噛み締めた。
「やっと目が覚めたようだね」
「……ねぇ、いち兄」
「なんだい」
「ボク、何時間眠ってた？」
「三時間ほど」
「……」
何か言いたげに動いた口だが、そこから発せられる言葉は無かった。そして私も何を言うでもなく、「乱の側にいてあげて」という主命──いや、きっと主殿のお気遣いなのだろう──……を果たすため、ただジッと
──主殿から応援要請が届いたそのあと、私はすぐさま五振りの刀剣男士を率いて現世の水族館へと身を運んだ。
どうにか持ち堪えているといいんだが……。
大事な主と弟の無事を願いながら、私達は主殿の霊力を頼りに捜索を始めた。そしてすぐに二人の姿を捉えることが出来た。
……真っ赤な血を流す、主殿。
ひゅっ、と息が詰まったような気がした。
なぜ、そんな。
恐らく乱が敵を
私達の存在を認知したらしい彼女は、苦痛と疲労に歪めていた顔を一転させ、へらりと力無く笑った。その背中には、同じくケガを負う乱が目を閉じたまま動かなくなっていて。
ああ、そうか。主殿は気絶してしまった乱を背負い、たった一人で逃げ続けていたのか。私達が駆けつける今の今まで。
頬の傷は、敵に斬りつけられたのかもしれない。
膝の傷は、逃げている時に転んだのかもしれない。
ひたすら、憎悪を覚えた。
「主、遅れてしまって本当にすまない。さあ、あとは僕達に任せて」
「アタシらの主に怪我させた罪は重いよ〜？」
いつものように柔らかい笑みを浮かべる歌仙殿。心配ない、とでも言いたげに豪快に笑声を上げる次郎太刀殿。けれどすぐにわかった。目が笑っていないと。
……いや、彼らだけではない。その場にいる全員の表情が殺意に満ち満ちていた。多分、私自身も恐ろしい形相をしているだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオト(プロフ) - 心魄さん» 返事が遅れてしまいすみません〜〜！お褒めいただき大変嬉しく思います。これからも更新頑張りますので、応援よろしくお願いいたします！コメントありがとうございました。 (2017年5月29日 22時) (
レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
心魄 - 面白いですね！(上から目線ぽくてすみません！)これからも更新頑張ってください(*^▽^)/★*☆♪この作品大好きです♪ (2017年5月22日 21時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - あやとり猫さん» コメントありがとうございます！さ、最高ですと……！？嬉しいです感激です！夢主ちゃんが気に入っていただけて良かったです。なるべく標準的な女の子にしようと心がけているので共感していただけると幸いです！はい、これからも更新頑張ります。応援感謝です！ (2017年3月22日 22時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
あやとり猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!えっえっなにこれ最高ですか(最高です) 演練での完全勝利Sおめでとう夢主ちゃん!!(( 夢主ちゃんが私の化身なんじゃないかってぐらいそっくりです(笑) これからもゆるりと頑張ってください(*^^*)更新お待ちしております!! (2017年3月21日 14時) (レス) id: ace5edcb89 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオト
| 作成日時：2017年1月8日 15時
