13.*〃 ページ15
とりあえず、誰でもいいからこの穴に気づいてくれさえすればいい。鶴丸への説教は後回しだ。
「大倶利伽羅！ 肩車して！」
私の要望に、大倶利伽羅は文句を言うことなく従ってくれる。下は踏み場の悪い土だというのに、彼は涼しい顔で私の体をヒョイっと持ち上げた。
そのおかげで、手を伸ばせばギリギリ廊下の板材に触れられる高さまで来た。このまま地上に出たらきっと太郎太刀を見下ろせるな、なんて場違いな考えを振り払い、私はスゥッと息を吸う。
「誰かー！ 助けてぇぇぇ！」
よし。あとは待機。
主の悲鳴が聞こえたらきっと駆けつけてくれる。
ふぅ、と私は息を吐いて、ゆっくりと大倶利伽羅の肩から降りようとした矢先、何やら柔らかい土を踏んでしまったらしい彼の体がガクリと揺れた。
嘘でしょ。デジャヴ。
ひっくり返る景色に一抹の戦慄を覚えながら、私は再び地面へ。いや正確にいうなら大倶利伽羅の上へ。
「もうほんとごめん二回もクッションにしちゃって」
「……いや、今のは足元を崩した俺が悪い。ケガはないか」
「奇跡の無傷です」
「そうか」
大倶利伽羅って意外と紳士なんだカッケェ、とときめいたところで、私は改めて天を仰いだ。うん。誰も来ないな。
ちょっと！ みんなの主が穴に落ちてるんだよ！？ 普通、死に物狂いで助けに来てくれるんじゃない！？
なんともまあ不運なことに、主至上主義の長谷部と加州は合戦場に出ている。くっ、あの二振なら間違いなく光の機動力で助けに来るだろうに。
「ここを通りかかる刀はいないのか」
「いや、この廊下の先に行っても私の部屋と書庫しかないから……人通りはちょっと、ね」
希望が見出せず項垂れてしまう。
「どうしよう、このまま土に埋もれて西洋の墓地みたいになっちゃったら……」
「あまり不安がるな。きっと誰かが助けに来る」
と言って、大倶利伽羅は私の頭を撫でた。
そこでふと我に返る。
主である私が弱音を吐いてどうする、と。
どんな状況下に置かれようとも、審神者は常に冷静でなければならないのだ！ バカヤロー！ 情けない姿を見せるな！
──そのとき、頭上から「何をやってる」と声が降ってきた。
脊髄反射で顔を上げると、そこには息を飲むほど美しい神様がいて。私は思わず泣きそうになる。
「うわぁぁぁ〜、山姥切！ めちゃくちゃ綺麗だよ！」
「き、綺麗とか言うな……！」
「待って待って頼むから逃げないで！ 助けて！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオト(プロフ) - 心魄さん» 返事が遅れてしまいすみません〜〜！お褒めいただき大変嬉しく思います。これからも更新頑張りますので、応援よろしくお願いいたします！コメントありがとうございました。 (2017年5月29日 22時) (
レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
心魄 - 面白いですね！(上から目線ぽくてすみません！)これからも更新頑張ってください(*^▽^)/★*☆♪この作品大好きです♪ (2017年5月22日 21時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - あやとり猫さん» コメントありがとうございます！さ、最高ですと……！？嬉しいです感激です！夢主ちゃんが気に入っていただけて良かったです。なるべく標準的な女の子にしようと心がけているので共感していただけると幸いです！はい、これからも更新頑張ります。応援感謝です！ (2017年3月22日 22時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
あやとり猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!えっえっなにこれ最高ですか(最高です) 演練での完全勝利Sおめでとう夢主ちゃん!!(( 夢主ちゃんが私の化身なんじゃないかってぐらいそっくりです(笑) これからもゆるりと頑張ってください(*^^*)更新お待ちしております!! (2017年3月21日 14時) (レス) id: ace5edcb89 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオト
| 作成日時：2017年1月8日 15時
