10.〃 ページ12
主不足で俺は今にも折れそうだ。あ、心がね。
はぁ、と深い溜め息を吐いて、俺は主の部屋から庭を見下ろした。この部屋は二階にあるため、非常に見晴らしがいい。
最近になってようやく温かくなってきたおかげか、今まで一面雪に覆われていた庭は、少しずつ緑を取り戻していた。春も近い。
ふと左を見たとき、ある一点に目が止まった。
誰かが木に頭をガンガンぶつけていたのだ。
ああ、ご乱心中の長谷部か。
言うまでもなく、あいつも主の現世デートには反対だった。そりゃもうすっごい反対してた。俺も引くくらい。
だから、俺がじゃんけんで負けた時は恐ろしいほど青ざめてたし、のちに白目ひん剥いて倒れてた。それくらい嫌だったんだな。
「主、早く帰って来ないと長谷部死んじゃうよ」
あー、ほんとなんで負けちゃうかな俺。じゃんけんなんて余裕余裕、とか言って調子こいてた俺を殴りに過去に飛びたい。いや、歴史修正主義者にはならないからね？
……おっと、こうしてる間にも随分と時間が経っていたみたいだ。
そういえば主に買い出しを頼まれていたことを思い出す。確か畑当番に使うホースが壊れたとかなんとか。
あまり気の乗らないまま、俺は財布を持って門へと向かう。途中、木に頭突きを繰り返す長谷部を横切ったが、オーラが怖すぎたので放っておいた。
大きな門に手をかけた時、外の方からこちらへ近づいて来る足音が聞こえた。
──……主だ！
姿は見えないものの俺はすぐにわかって、そして急いでその重い扉を開ける。
「主っ！！」
「あっ、加州」
えっ、と俺は息を呑んだ。
主はなぜかズブ濡れで、しかも髪もボサボサで、ヒールの折れたパンプスを手に持ち、血の滲んでいる裸足で、あははと笑いながらそこに立っていた。
一気に体温が下がっていくのが自分でもわかる。
「何があったの」
「……え？ まあ、いろいろ」
「何があったのって聞いてるんだけど」
「やだな、加州顔が怖いよ。可愛くない」
「あの男にやられたの。それなら今すぐ俺が叩き斬ってくる」
「ちょっ、違うから違うから！ そんな物騒なこと言わないで。ね？ ほら、今日の占いがたまたま最下位だっただけの話だから」
俺の気を鎮めるために主はそう明るく言うんだろうけど、残念ながらそれは全くの逆効果だった。ふつふつと怒りが沸き起こってきて、自然と眉間にシワが寄る。
「泣いたでしょ」
「っ！」
涙の跡だって、俺にはお見通しだ。
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アオト(プロフ) - 心魄さん» 返事が遅れてしまいすみません〜〜！お褒めいただき大変嬉しく思います。これからも更新頑張りますので、応援よろしくお願いいたします！コメントありがとうございました。 (2017年5月29日 22時) (
レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
心魄 - 面白いですね！(上から目線ぽくてすみません！)これからも更新頑張ってください(*^▽^)/★*☆♪この作品大好きです♪ (2017年5月22日 21時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - あやとり猫さん» コメントありがとうございます！さ、最高ですと……！？嬉しいです感激です！夢主ちゃんが気に入っていただけて良かったです。なるべく標準的な女の子にしようと心がけているので共感していただけると幸いです！はい、これからも更新頑張ります。応援感謝です！ (2017年3月22日 22時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
あやとり猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!えっえっなにこれ最高ですか(最高です) 演練での完全勝利Sおめでとう夢主ちゃん!!(( 夢主ちゃんが私の化身なんじゃないかってぐらいそっくりです(笑) これからもゆるりと頑張ってください(*^^*)更新お待ちしております!! (2017年3月21日 14時) (レス) id: ace5edcb89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年1月8日 15時
