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やばい。
来てしまった。
腰には刀。廃刀令のあるこのご時世に、堂々と刀をぶら下げているのは、役人、もしくは……
攘夷浪士や人斬りなど、日陰者だけ。
私は緊張で震える手を押さえつけ、静かに口を開いた。
「ようこそ、吉原へいらっしゃいんした。わっちは椿ともうしんす」
い、言えた……!
ちなみに、"椿"というのは私の源氏名。本名を言うワケにはいかないということで、月詠さんに付けてもらった名前だ。
その攘夷浪士は、予想していたよりもだいぶ若く、20代前半だと思われる。
怪しまれないようにしなくては……。
すると、
ドサッ
「……え?」
気がつけば身体が反転していて。
「……もう、いいだろう」
そう言う男のセリフが、頭の中でリピートする。
──え、もう!?
早すぎる。これはいくらなんでも早すぎる。
月詠さんの話では、酌をしつつ会話を楽しみ
、その後、客の要望で床につくものだと聞いた。
それに、私が事前に調べた情報では、最低でも3回は会わないと床につけないって……!
なんて考えているあいだも、その男の手は止まらない。
帯へと手が伸ばされた時、私は驚いてとっさに男を突き飛ばしてしまった。
「……少し、急すぎではありんせんか?わっちはどこにも逃げんせんよ」
動揺しながらそう言うと、その男は妖しく笑った。
「貴様、真選組のものだろ?」
……。
襖を一瞥するが、土方さんがやって来る気配はない。
なんで……なんで私の正体が……!?
目を泳がせる私を見て、さらにその男はほくそ笑んだ。
そして、
「……っ!?」
首元に感じた、冷たい何か。
涙目になったせいでよく見えないが、それは間違いなく刀で。
攘夷浪士は、私に馬乗りになりながら、首に刀をつきつけたのだ。
──土方さんっ!
狂気じみた目が、私を捉えて離さない。
殺される……。
本能がそう感じた。
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特撮オタク女子 - とても面白かったです!ありがとうございます! (2019年8月15日 20時) (レス) id: f9b0269678 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - すごくおもしろかったです! 文を書くのがお上手ですね〜! このお話に出会えて良かった! (2018年3月2日 18時) (レス) id: f7a865ee48 (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 美空さん» 美空さんコメントありがとうございます!返事がかなり遅れてしまい申し訳ございません!わ、お気に入り作品に登録してくださり感謝です!ましてや作者にまで登録だなんて……!?とても嬉しいです。これからも頑張ります! (2018年1月13日 21時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
美空(プロフ) - 悪女のいろは、読ませていただきました!ほんとに面白かったです(〃▽〃)読み出したら止まらなくなっちゃって、お気に入り作品&作者に登録させてもらいました!(^o^)/ (2017年2月5日 3時) (レス) id: c3845c95d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴村 - 面白いです (2015年5月31日 17時) (レス) id: 56954dcc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2015年2月20日 18時