【リク】遊女になりまして1 ページ14
「……どうか、わっちを可愛がっておくんなんし。あれ、大丈夫かこれ?」
いつもとは違う、色鮮やかで艶やかな着物を身にまとった私は、1人そう呟いた。
──ここは吉原。
なぜ私が吉原で、廓言葉を使っているのかというと、話は一昨日にさかのぼる。
◆ ◆ ◆
「A、頼みがある」
土方さんに呼び出されていた私は、副長室で首を傾げた。土方さんの頼みというのは大体ロクでもないことなので、若干心配である。
「吉原に、遊女として潜入してほしい」
「……は!?」
「ある店に、頻繁に過激派攘夷浪士が出入りしているという情報が入ってな」
土方さんいわく、その攘夷浪士の相手をして油断させてほしいとのこと。そして真選組で一気に畳み掛けるとか。
「お前に危険が及ぶ前に検挙するから安心しろ」
「……はあ。それならいいんですけど。沖田さんは、私が遊女になること知ってるんですか?」
私の質問に、土方さんは一瞬言葉を詰まらせた。この様子じゃ、まだ知らせていないらしい。
「総悟がこれを知ったら確実に反対される。だから、あいつには黙っていてくれ」
「……あまり気は乗りませんが、わかりました。真選組のためですから」
「ああ、助かる。吉原の関係者にはもう話は通している。むこうで着物を用意してくれるそうだ」
◆ ◆ ◆
というワケで冒頭にいたる。
肩を少し出した着物。そして、前に結ばれた派手な帯。頭には美しい装飾がほどこされた、かんざし。
普段とは違う自分になってしまったようで、無償に胸が高鳴る。
……って、ダメだ。集中しなくては。せっかく月詠さんに廓言葉を教えてもらったのに。
月詠さんというのは、この吉原の自警団【百華】の頭領さんで、真選組に協力してくれた人だ。余談だが、とても美人である。
「わっち……わっち……ありんす」
忘れないよう繰り返す。
日も沈み始め、外が騒がしくなってきた。
私がやるべきことは1つ。
過激派攘夷浪士を油断させ、真選組に突入させるスキをつくること。
チャンスは一回しかない。
部屋に設置されたという隠しカメラ。そのカメラの向こうでは土方さんが突入のタイミングをうかがっているはず。
土方さん達を信じよう。
そう思い、私は再び廓言葉を練習するのだった。
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特撮オタク女子 - とても面白かったです!ありがとうございます! (2019年8月15日 20時) (レス) id: f9b0269678 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - すごくおもしろかったです! 文を書くのがお上手ですね〜! このお話に出会えて良かった! (2018年3月2日 18時) (レス) id: f7a865ee48 (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 美空さん» 美空さんコメントありがとうございます!返事がかなり遅れてしまい申し訳ございません!わ、お気に入り作品に登録してくださり感謝です!ましてや作者にまで登録だなんて……!?とても嬉しいです。これからも頑張ります! (2018年1月13日 21時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
美空(プロフ) - 悪女のいろは、読ませていただきました!ほんとに面白かったです(〃▽〃)読み出したら止まらなくなっちゃって、お気に入り作品&作者に登録させてもらいました!(^o^)/ (2017年2月5日 3時) (レス) id: c3845c95d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴村 - 面白いです (2015年5月31日 17時) (レス) id: 56954dcc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2015年2月20日 18時