世界セーフク少年少女｡

☆ ページ29

玄樹side









キラキラ輝くイルミネーション、
大きなツリー、
ふわふわと舞う雪を見て





クリスマスだね、って君は笑う。









町中カップルだらけで
俺たちもその中の一組。









でもなんでだろう。









キスを拒まれたあの日から
君と俺を繫ぐものはもうこの繋いだ手しか
ないのかなって思ってしまうよ。









詳しい話は聞いてない。




でも神宮寺と何かあったんだろうな。





あいつ、最近生徒会に来ないしね。









「……どうしたの？ 岩橋くん。」



少し心配そうに顔を覗き込んでくるA。








……最後の賭けに出ようか









岩橋「キス、していい？」







驚いた顔をして一瞬目を泳がせて

こくん、と首を縦に振って目を閉じる。









柔らかく冷たい頬に手を添えると

Aは少し強張ったようにぴくりとした。









唇まであと数センチ…








岩橋「無理……だよ。」


「岩橋くん……？」









薄く開いた瞼、
その目にはもう俺が映ることはできない。









そう思ったんだ。









岩橋「……別れようか、俺たち。」








白い雪の中、悲しそうな顔をするAはとても綺麗で寂しかった。









「……はい。」









手が離れる。









ああ、ただ一つの俺たちを繫ぐもの。









いや、繫ぐものならばある。









紅いブレザー、






君に従う忠誠。








それなら、許してくれますか？









「良いクリスマスを、岩橋くん。」









良いクリスマスなんてこうなってからじゃ
過ごせるわけないのに……
そうやって言う君はなかなかな悪女。









いや、それでこそ。か。









岩橋「良いクリスマスを、生徒会長。」









寒空の下、二人は反対方向に歩き出した。

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