〜終〜 ページ27
▫️間白と夏油は双子を連れて、座敷牢の部屋を出て、外へと出た。座敷牢があった建物自体が森側に面していたため、村人に見つかることなく、森の中へと逃げることができた。
「ただのペリカンじゃん」
「こんな見た目でも準一級だよ」
夏油が運搬用にと出した呪霊は、ペリカンを大型トラックほどの高さまで拡大させたような見た目だった。
そのペリカン呪霊に乗る、というよりは口の中に搭乗する使用だった。
夏油が先に乗り、双子を引き上げて、中に入れる。後は間白だけ。
「A。手を」
「いや、その前に君のカバン。村に置きっぱなしはまずいでしょ」
「いつの間に」
「"猿の手"使っただけ。それじゃ、先に下山してて。私はあの親子と話し付けてくる」
「あれは、話が通じるような相手じゃないだろ」
「この子達は高専で預かるって言うだけだよ。大丈夫。すぐ追いつくから」
「お姉さん、ダメだよ。一緒に行こう」
双子のうち、金髪の子が間白を引き止める。
「そんな心配しないで。お姉さん、意外に強いから。あ、そうだ。これ」
間白は自身の前髪を留めているバレッタを渡した。
「このバレッタ、私が帰ってくるまで預かっててくれる?絶対、帰ってくるから。それまで持ってて」
「わかった」
預かったバレッタを絶対に手放さないと強く握りしめた。
「夏油君。後は頼んだ」
「わかった。君のことだ。難なくこなすんだろう?」
「もちろん。じゃあ、また後で」
それを合図にペリカン呪霊は翼を広げて飛び去った。見えなくなっても、間白はその方向をじっと見つめていた。
──お疲れ様。
"猿の手"は労いの言葉をかけた。
「うん。一区切り、だね」
夏油は離反しない、と確定した。その証拠に間白の体は足から順に透け始めていた。
「杞憂だったな。てっきり、夏油君暴れちゃうかと思った」
──他人の心など憶測でしかないが、お前の言葉が効いたんだろう。頼まれてもいないことをするなと。あの双子にしてあげることは、村人への復讐じゃない。虐げる大人から引き離し、今すぐ手を差し伸べることだと思ったんだろ。
「私の言葉、か。そうだといいな」
間白に関する記憶、記録はこの世界から再び消える。次の布石を取り払うために。
「……ごめんね、夏油君。双子のことは任せたよ」
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作者名:四畳間 | 作成日時:2024年2月20日 18時