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「わかったよ。立ちっぱなしもなんだ。こっち」
間白は誘われるまま、夏油と九十九の間に座った。
「じゃあ、ご要望通り、直接本題に行こう。
間白A。君、高専やめて、私と一緒に来ない?」
「「え/へ?」」
「夏油君にはもう言ったが、私は呪霊が生まれない世界を作る方法を探している。"猿の手"はその答えに近づくための重要な研究材料だ。なにせ、今となっては記録がほとんどない紀元前の呪術を知っている。それに、君の術式は私の旅に便利そうだからね。どう?上層部のこともあるし、悪くない提案だと思うんだ」
九十九は間白に一枚の紙切れを渡した。
「気が向いたら、いつでも連絡してくれ」
♦︎♦︎♦︎
夏油と間白は九十九を高専の裏門まで見送った。
高専敷地から一般道へと続く道路トンネルを九十九はバイクで抜けていく。彼女の姿が見えなくなると、夏油の方から口を開いた。
「Aは呪霊の発生原因が非術師だと、知っていたか?」
「うん。知ってるよ。もしかして、九十九さんに言われた?」
「あぁ。A、君は九十九さんのところに……」
「行かないよ。だって、絶対あの人、他人を振り回すタイプでしょ。そんな人と旅したくない」
間白は渡された紙切れを握りつぶし、術式でパルプ繊維と化したそれを手から払い落とす。
「夏油君は非術師が嫌い?」
「……それだけじゃない。君をこき使う上の奴らも。2つとも、君が望む平穏を壊していく」
「じゃあ、君は、私のためを思って、非術師も、上層部の奴らもわざわざ嫌ってくれているのか?ありがた迷惑だよ。私がいつそんなのを頼んだ。私は助けて欲しかったら自分の口で言える。全く、君の悪い癖だよ。なんの得もないくせに、君の中で弱者と決めつけた対象を勝手に憐れんで、助けようとするところ。そりゃ、追い詰められる。……今の君の中では、理子ちゃんさえも殺すことになるのか?なら、救うためとは言え、彼女を非術師にしてしまった私も殺されるべきだ」
間白は踵を返し、校舎の中へと戻っていった。
夏油はその背中を追いかけることができず、その場にしばらく立ち尽くしていた。
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作者名:四畳間 | 作成日時:2024年2月20日 18時