〜3〜 ページ22
「私は平穏が好きなの。非術師を守るんだ！とか上層部のために！とかで動いているわけじゃない」
「それにしては自己犠牲が目立つが」
「それは夏油君の主観だろ？私は平穏に過ごしたいという欲求に素直なだけ。そして、その平穏には君たちと過ごす日々が含まれている。ついでに、任務を頑張ると友達からジュースを奢ってもらえるし。しかも、今日は依頼主さんから夏みかんをもらうことができた。」
間白はニヤリと笑った。
「そんなもんだよ。私は自分と、運が良ければ貰えるご褒美のために動いているんだ。聖人じゃない。まぁ、君は責任感が強いから、私の言葉ですんなりと割り切れるわけじゃないと思うけど」
間白は立ち上がり、自販機で缶のココアを買った。それを夏油に手渡す。
「夏油君もお疲れ様ってことで、ご褒美」
「……ふふっ、私も貸しは作りたくない主義でね。お返しをしなくては」
「なら、この前の手紙みたく、私がSOSを出したら手伝ってくれ」
「ココア一本にしちゃ対価が大きすぎないか？」
「そりゃ、1ヶ月前に君が壊したトレーニング用武器の修理分込みだからね」
♦︎♦︎♦︎
「だれだろ」
いつもの休憩所。そこに差し掛かる手前の角で、間白は足を止めた。先のベンチには夏油であろう姿と、その隣に見知らぬ女が座っていた。内容はわからないが、お互いに何か話をしている。そんな中を通るのは気まずいが、今更反対方向に回るのも面倒だ。
間白はそろりと忍足で、私のことは気にしないでくださいの顔で通り過ぎようとした。
「お、君の方から来てくれるとは。探す手間が省けた」
間白はベンチの方へ顔を向ける。夏油とも隣の女とも目が合った。
「さて、"猿の手"。君はどんな女がタイプかな？」
その見知らぬ女は明確に"猿の手"へ話しかけた。そんな酔狂な人間に間白は警戒心を持ちながら夏油の側に寄る。
「夏油君。この人だれ？」
「特級術師の、九十九由基。ほら、任務につかずにプラプラしてる」
「あぁ、あの」
「ちょっと、私、高専全員にそんな認識されてるの？はぁ、まぁそんなことはどうでもいいや。んで、"猿の手"、君は答えてくれないのかい？」
「おじ、……"猿の手"は私以外の人間と関わるのを極力避けているので」
「連れないなぁ。」
「他に聞きたいことがあるなら、私を通して答えます。"猿の手"曰く『女のタイプなんぞ聞く前にとっとと本題に入れ』だそうです」
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作者名：四畳間 | 作成日時：2024年2月20日 18時
