〜2〜 ページ3
「ここは……」
点数稼ぎのため、仙台結界に入った乙骨は道中に1棟のビルに目をつけた。
なんの変哲もない4階建の商業用ビル。しかし、戦場と化したこの地において窓ガラス一枚割れていない。その上、異様な呪力が建物全体を覆っている。周囲に呪霊の姿が見えないのはそのせいかと乙骨は見当をつけた。
そして、この中にはそれなりの人数がいる気配がした。
──術師同士がこの人数で手を組むとは思えない。ここにいるのは避難している人たちだとは思うけど。
無条件で一般人を匿う術師はいない。乙骨はそう踏んでいる。
警戒を解かず、ビルの入り口へと近づく。
その瞬間、ビルの外壁に「動くな！」と大きな文字が浮かび上がった。同時に、ビルの入り口であるガラスドアから人の姿が現れた。
「話が通じるな。呪力にも刺々しいほどの殺気はない」
ガラスドアから現れた女の子は自分と同い年くらいに見えた。しかし、発せられる声は妙年の男性を思わせる。その歪さから過去の術師だと察した。
乙骨は刀を構える。しかし、相手側は一向に戦うそぶりを見せない。
「あー、A。多分平気だからお前が対応しろ。俺たち、他の暴れ回ってる術師たちと勘違いされてる」
その言葉と同時に女の子の雰囲気が変わった。いや、年相応に戻ったと言うべきか。
「す、すみません。少しだけ話を聞いてもらえませんか」
そう言って無防備に頭を下げる少女に乙骨は刀を納めた。微かに震えている握り拳に嘘はないと判断したからだ。
乙骨はそのまま彼女の後ろについていき、ビルの階段を上がっていく。
そして、3階のレストランの出入り口ドア前でで少女は立ち止まった。乙骨はドアのガラスを覗くと、20人ほどの人がそれぞれテーブル席に座っているのが見える。
「この方々を結界の外に出すのを手伝って欲しいんです。報酬も払います。私が持っている点数も全て差し上げます！なのでどうか」
少女は再び頭を下げる。この言葉に嘘偽りはないのだろう。しかし、この提案に彼女のメリットが見つからない。
「けど、どうしてわざわざ避難民を匿うようなことを？貴方は羂索の誘いに乗った過去の術師のはずだ」
「ん？羂索？誰？おじさん知ってる？」
「知らん」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：四畳間 | 作成日時：2024年2月20日 18時
