束の間編〜1〜 ページ20
▫️あれから1年が経った。
3年生になってからの夏。4人全員が揃うことは無くなった。
「おじさん。次の任務まであと何分?」
──15分だ。言わなくてもわかる。俺が見てるから少し寝ろ。
昨年頻発した災害の影響で呪霊が湧くように現れた。これに伴って、間白の仕事は増えた。
家入は危険な任務に赴くことはないため、高専待機が多い。
そして、五条は元より、夏油は特級へと格上げされ、それぞれ単独任務が増えた。
「……またか」
ベンチに座り、体を壁の端に寄りかからせながら眠る間白の姿を夏油は捉えた。
奥のシャワー室と廊下の交差点にある休憩所。そこで眠る間白の光景はもはや珍しくもない。しかし、誰もそれを注意しようとはしない。
間白が拘束から解かれた後、嫌がらせかのように彼女に対する任務が増えた。そして、今は更に。
授業終わりの放課後。間白が補助監督の車に乗っていくところを夏油は毎日見ていた。
夏油は目の前にある自販機で買ったスポーツドリンクを間白の側に置いた。
いくらクーラーが完備されているとは言え、窓からは爛々とした日光が入ってきている。間白の額は薄らと汗が馴染んでいる。
「"猿の手"、Aが目を覚ましたらこれをあげてくれ。私の奢りだと」
夏油は"猿の手"と会話したことはない。しかし、間白の話を聞く限り、意思があることは知っていた。
「後でAに礼を言っておくよう伝える」
一瞬、誰の声かわからなかった。
"猿の手"の返事だと気づいたのは、その数秒たった後だった。
♦︎♦︎♦︎
「あ、夏油君!さっきはありがとう」
夕方、任務を終えたであろう間白はあの休憩所に再び姿を現した。わざわざ、目星をつけて夏油を探しにきたのだろう。間白は彼にスポーツドリンク分の120円を差し出した。
「奢りだったんだけど」
「貸りは作りたくない主義でね。というか、奢ってもらうようなこと、何もしてないし」
間白は夏油の手のひらに無理くり小銭を握らせる。その時、夏油は俯いた間白の顔がなんだかくたびれているように見えた。
「A。最近寝れてるかい?」
「それは君もだよ。薄らだけど隈がある」
夏油は寝れていない、というよりも肉体的、精神的な疲労が積み重なりが顔に出てしまった状態だ。
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作者名:四畳間 | 作成日時:2024年2月20日 18時