〜終〜 ページ15
◽️間白は誰がどう見ても立派な牢屋に閉じ込められていた。腕には手錠代わりである呪力抑制の呪符が巻かれている。
間白と"猿の手"の前では牢獄は紙も同然だったが、抵抗すると高専の面々に何があるかわからない。
今日で2週間。
8時きっかりに来るはずの朝食配膳が来ない。というか、人の気配がない。
「呪霊?」
3級程度の呪霊が壁をすり抜けて、間白のいる牢屋へ入ってくる。カエルのような体と背中に巨大な目玉が一つ付いている呪霊だ。目が合ってしまったが、一向に襲ってくるような気配はない。
「やっと見つけた」
夏油の声が聞こえた。
「A。迎えに来たよ」
ここは薄暗く、制服の生地が黒いせいでよく見えない。だが、彼から強烈な血の匂いが漂っている。
夏油は呪霊で牢屋の鉄格子を破壊し、間白の呪符を剥がす。
「どうして……」
「遅くなってごめんね。ここ見つけるのに手間取って」
血の汚れなどに気にせず、間白は夏油の胸ぐらを掴んだ。
「お前馬鹿か!呪術界そのものを敵に回したんだぞ!なんでだ!なんで、私を助けようとした!!」
夏油は見たことない間白の鋭い剣幕に一瞬呆気に取られた。しかし、すぐさま言い返す。
「君は、理不尽だと思わないのか?護衛に失敗したのは私たちだというのに。私たちにはお咎めがなく、尻拭いをしてくれた君が拘束されて。上の連中は君を死刑にするどころか、君の死体を弄ぼうなんて魂胆だ!君ならわかってたんじゃないか?!なんで抵抗しない!」
「安直に私が暴れれば、お前たちや先生、灰原君や七海君に影響が出るのがわかってたからだ!もう、ほんっとに馬鹿。これからどうすんのよ」
「……」
間白は夏油から手を離し、その場にしゃがみ込んだ。その丸まった背中を夏油は慰めるように摩った。
「それは問題ない。流石の私だって無闇矢鱈に行動したわけじゃないさ」
「傑〜。こっち終わった」
一仕事終えた調子で、左の廊下奥から五条が現れた。
夏油と五条。2人の離反となれば、やりなおしの時間遡行が発動しないらしい。
そりゃそうだ。彼らが揃えば最強だ。羂索なんて目じゃない。
「にしても趣味悪りぃ場所だな。とっとと出ようぜ」
「そうだね。A、立てる?」
間白は差し伸べられた手を振り払い、2人から距離を取る。
間白の手には床に落ちていた鉄格子の一部。術式で骨すらも貫通するよう、先端を鋭利に尖らせる。
そして、一思いに自身の胸へ突き刺した。
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作者名:四畳間 | 作成日時:2024年2月20日 18時