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〜7〜 ページ8

◽️間白は袖を捲り上げ、右腕に巻いていた包帯を解いた。
 姿を現した右腕は痣のように変色した赤紫の皮膚が肘まで続いている。
 この腕は間白Aが"猿の手"を身に宿した証。

「やっぱ、噂は本当だったんだな……」

 坂部は喜びを堪えきれない、震える声で呟いた。
 こうして呪詛師に襲われることは、間白にとって1度や2度のことではない。
 呪術師と呪詛師に広まった"猿の手"の噂。

「高専になんでも願いを叶えてくれる、払う代償もほんの少しだけでいい"猿の手"がある」
「その"猿の手"は受肉していて、払う代償の交渉ができる」
「"猿の手"は主人と認めた持ち主の願いしか叶えてくれない」

 この噂はほぼ真実である。
 3つとは言わずに何度でも。代償を払えば、どんな願いも叶えてくれる"猿の手"。
 あらゆる呪術師、呪詛師が欲しがる奇跡の産物。
 間白Aはその受肉体である。
 しかし、その受肉は間白と"猿の手"の宿主がお互いに合意した結果である。故に間白Aは間白Aの意識を保ったままでいる。

「願いはなに?なんでも叶えてあげる。その代わり、その子を離して」
「話が早くて助かるよ」

 坂部は笑みを浮かべる。

「まずは五条悟を殺せ」

 この願いはありがちであった。
 数多の呪詛師が間白の前に現れては、この願いを口にする。
 しかし、今の今まで五条悟は死んでいない。
 これが何を意味するか。
 坂部は呪詛師として半人前かそれ以下。おそらく術式か式神術で従えている呪霊の扱い、人質交渉の手腕、情報網などのありとあらゆるものが足りていない。
 間白は勝機を見つけた。

「戦う相手のことはちゃんと調べておいた方がいいよ」

 その言葉と同時に呪霊が内側から裂けた。
 コンクリートの床が変形し、呪霊の体を貫いていたのだ。
 思わぬ攻撃に呪霊は少年を拘束していた手を離す。

「な、なんでだ?!」

 坂部も隆起した床に弾き飛ばされる。

「私の術式は体のどこかしらが直接触れていれば発動するのよ」

 そう言う間白の足は裸足だった。虎杖に担がれていた時に靴下もろとも脱ぎ捨てていた。
 致命傷を受け、体が崩れ始めた呪霊から少年を引き離す。

「クソっ!」

 坂部は体勢を立て直す。両手に子供を抱える間白に対して接近戦を試みる。
 しかし、こちらには虎杖がいる。
 ガードする隙もなく、坂部は虎杖のアッパーを顎にうけてそのまま倒れた。K.O勝利である。

〜終〜→←〜6〜



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作者名:四畳間 | 作成日時:2023年12月7日 17時

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