幕間 保険 ページ42
「注文通りに作ったが。一体何に使うんだ」
究極メカ丸、の本体──与幸吉は以前から頼まれていた呪具を間白に渡した。その見た目は大きめの注射器と言ったところだ。
「実験ってとこ。面白い術式を持った人と知り合いになれてね」
この2人の交流は今年の5月から始まった。
きっかけは幸吉の方からだった。"猿の手"の噂を聞きつけ、天与呪縛からの解放のために間白へコンタクトを試みた。
実際に行われた彼への施術は"猿の手"ではなく、間白お決まりの荒技(1回殺す)だったが。
「あ、そうだ。右腕の調子はどう?呪力や術式範囲はどうなってる?」
「呪力出力の方はあまり変わりはない。だが、術式範囲が本州まで狭まった」
1つ失う代わりに1つ得る。これが天与呪縛の理。
幸吉の場合、本州のみが本来の術式範囲であったが、そこに「皮膚の脆さの代わりに沖縄」、「常に全身に走る痛みの代わりに北海道」と言った具合に複数の天与呪縛が絡みあっていた。
「もっと、弱体化すると思ったんだが」
「言葉を選ばずに言えば、君はその程度の代償で日本全土に及ぶ術式範囲とその呪力出力を持つことができたんだ。天与なしでも元々のポテンシャルは高いってことさ」
今日、残りの天与呪縛である「足の欠損」をを解除すれば、幸吉は晴れて五体満足の肉体を手に入れる。
もちろん、間白もタダ働きではない。
先ほど幸吉が渡した呪具はいくつかある見返りの1つだ。
「上層部は君の体の変化について何か言ってた?」
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作者名:四畳間 | 作成日時:2023年12月7日 17時