波及編〜1〜 ページ35
「まったく、追い出したのはそっちなのに。人使いが荒い」
間白はブツブツと愚痴をこぼしながら山奥へと足をを進める。
今年の京都姉妹校交流会は前代未聞の大波乱となった。
1日目の団体戦の途中で特級呪霊と呪詛師が侵入。
結果、高専所属の呪術師と補助監督数名が死亡。さらに忌庫から保有していた宿儺の指6本全てが盗まれた。しかし、不幸中の幸いか、学生から死人は出なかった。
間白はこの交流会の1日前から長野へ出張に行っていた。いわゆる、根回しされたものだ。
呪術界の保守派筆頭、かつ京都校学長である楽巌寺嘉伸。彼は間白に対して「過激派」の派閥に属している。そんな彼と間白を接触させたくない他派閥が、間白を出張という名目で追い払った。
だが、今回の騒動で高専敷地内にある建造物に甚大な被害が出た。
そのため、間白へ建物の修復要請が下り、息つく間もなく高専へ帰ることとなった。
「土は術式でどうにかなるけど」
間白は変わり果てた森を見る。
生い茂っていた木々は跡形もなく。底が見えないほど抉られた地面が数百mも続く。
五条が放った虚式「茈」の威力が垣間見える。
「よっこいしょっと」
間白は抉られた地面の終着点、一番端っこにたどり着いた。そこから術式で地質に合わせながら土砂を端からコピー&ペーストして穴を埋めていく。
その場から動けない間白は、その埋まる様子をただボーっと眺める。
「ん?」
間白は気配を感じ、頭上へと視線を向けた。
鳥のようなナニかが空を飛びながら近づいてくるのが見える。
──式神?
間白は止まり木のように手を伸ばした。
そこに止まった式神は鳥を模した手のひらほどの小さなものだ。典型的な式神、というより随分と機械的な見た目をしている。
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作者名:四畳間 | 作成日時:2023年12月7日 17時