4人いる【呪術廻戦】 (ページ4)

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「これなんですよ。何かのミイラみたいで。フリマにでも売ろうと思ったら、この有様ですよ」

　3人が席に着くなり、さっそく坂部は件の呪物をテーブルの上に置いた。
　煤埃で汚れた木箱。横に長く、30センチほどの大きさだ。

「呪いなんて信じてなかったんですけど、こいつを持って帰ってから、どうも調子が出なくて。しかし、本当にいいんですか？研究で集めてるとは聞いてましたが。」
「ええ、歴史を中心に学ぶ専門学校で教鞭をとっているのですが。そのおかげで、伝手に神職の方がいるので。」
「んじゃあ、大丈夫ですね。あっ、ということは二人は生徒さんで？」
「はい。本人の希望もあって特別に助手として連れてきたんです。」

と伊知地はお決まりの虚言を吐いた。
　高専ではその時のカバーストーリーがマニュアル化されている。
　伊知地は経験と口先器用な2年上の先輩の背中を見てきただけあって、この自然な演技に目を見張るものがあった。

「中身を拝見させていただいても？」
「もちろん」

　伊知地は間白に目配せをする。
　それ合図に間白は木箱へ手を伸ばした。
　この時、坂部の目線は木箱ではなく、間白の右手に向いていた。
　無理もない。
　彼女の右手には包帯が巻かれており、覗く5本の指は全て赤紫に変色している。
　どうしても、これは人目を引いてしまう。

「うわっ、ほんとにミイラだ」

　木箱の中身を見て、虎杖は思わず声が出た。
　水気が飛び、茶色く変色した皮膚。
　硬く握り込まれた5本の指。
　申し訳程度に残った灰色の毛。
　確かに猿の手であった。

「虎杖君、あれ出して」
「おう」

　間白は少し焦った声色で虎杖を呼んだ。隅っこにいたはずの4級呪霊が、いつの間にかテーブルの端に齧り付いていたからだ。虎杖も察して、事前に伊知地から渡されていた呪符を間白に手渡した。
　間白は慣れた手つきで呪符を綺麗に隙間なく、猿の手に巻き付けた。