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幕間 呪力と脳 ページ24

「ただ乗り越えればいい話ではないそうで。痛み、苦しみ、欲求を麻痺させ、その中で己と向き合ったものが呪力に目覚めると。"猿の手"も言ってたんですけど、こう、言語化が難しくて。体験してみないとわからない心地というか」

 体験してみないとわからない。家入はそこになんとなくの共感を覚えた。
 かつて、同期の2人に反転術式を教えたことがある。「ヒューってやってヒョイ」としか言えなかった。

「ストレス、か」

 "猿の手"の言う通りであれば、確かに後天的に呪力を得た人間を見つけるのは困難だ。
 死の危険が迫ると、一時的に非術師でも呪霊が見えることがある。ただ、このストレスは一瞬のもの。すぐに脳は回復する。
 だが、常に呪霊が見えるほどの呪力が開花するにはストレスを継続的に受け、修復不可能にまで脳を変形させなければならない。さらにその環境下に置かれても心を壊さず、自分自身と向き合う。まるで悟りだ。その境地に辿り着ける人間など、ほんの一握りだろう。


♦︎♦︎♦︎


「間白、体調は」
「ちょっと呪力を使いすぎちゃったので疲れが。でも、それ以外は大丈夫です」

 間白は遺体を元の人間の姿に戻した。
 今まで、高専に運び込まれた変死体。いわゆる改造人間となった人たちは未だ遺族の下に帰っていない。というより、帰せない。
 呪術の秘匿もそうだが、これを見た遺族は卒倒どころの騒ぎではないだろう。

「間白、君のおかげで彼らは遺族の下に帰れる。よくやったよ」
「ありがとうございます」
「何か飲むか?コーヒーと紅茶しかないが」

 他には酒もあるが、未成年に提供できるわけがない。
 茶菓子の1つでも常備しとけばよかったと、家入はほんの少し反省した。

〜4〜→←幕間 呪力と脳



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作者名:四畳間 | 作成日時:2023年12月7日 17時

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