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「呪術高専って、僕でも入れるの?」
吉野は間白の表情を見る。答えは明白だった。
「ごめん、聞かなかったことにして」
「いや、入れないというわけでは。ただ、今の呪術高専に入れたくない」
万年人不足。呪術師にはなれなくとも、窓、補助監督として大いに歓迎されるだろう。
しかし、間白の友達という点が入学のハードルを上げた。
上の人間が間白を手に入れるための駒として、友情をダシに操り人形のように彼を使うだろう。
だが、これをありのまま伝えるには時間が足りない。
「最近、高専のお偉いさんが外部に情報を漏らした。それで何人かの呪術師や補助監督が死んでる。しかも、漏洩の張本人はまだ捕まってない」
半分嘘、半分真実。
少し先の未来。内通者による情報漏洩によって、交流戦の最中に特級呪霊による襲撃が起こる。死傷者も出る。
「それに。呪霊が見えるからと言って、わざわざこちら側の世界に来る必要もない。選択の余地があるなら、なおさら。友達に死んでほしくない」
「そんな危険な仕事、なら……間白さんはどうして呪術師になったの?」
間白は真っ直ぐに吉野を見据えた。
「命に変えても叶えたいことがあるの」
♦︎♦︎♦︎
なんとなく、吉野は再びあの映画館に足を運んだ。
規制線が貼られ、しばらくは再開しそうにもない。
その帰り道。家の前の階段に見知った姿が腰を下ろしていた。
「吉野ぉ。駄目じゃないか学校サボって」
「外村先生」
訪問客は吉野の担任である外村と言う男だ。
今日はそれほど暑くない。にも関わらず、だらしなく弛んだ贅肉を纏った彼の体は、真夏日を思い起こされる状態となっている。スーツの上着を脱ぎ、絶え間なく汗をかき、ヒフヒフと息が荒くなっている。
「聞いたか?佐山・西村・本田、亡くなったって。オマエ、仲良かったよなぁ」
頭が冷えた。そして、途方もない怒りと失望が吉野を襲った。
──人は見たいものしか見ない。時には明らかな事実を捻じ曲げてもね。けど、そうじゃないと生きていけない。
間白の言葉を思い出した。
先生は自分のクラスには何もない。みんな仲良しこよしが先生にとっての見たいもの。
もう、振り切って家の中に入りたかった。
もちろん、そんな吉野の心情を外村は汲み取れない。
「ストォッープ!!!」
険悪な空気の中、険悪な空気の中、事情聴取のために派遣された虎杖が現れた。
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作者名:四畳間 | 作成日時:2023年12月7日 17時