4人いる【呪術廻戦】 (ページ3)

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▫️任務資料に記載された、事の経緯は以下の通り。

『知り合いに呪物らしきものを持っている人がいる。本人の希望もあるため、回収を要請したい』

と2日前に"窓"から連絡が入った。
　その知り合い、改め坂部という男は1ヶ月前に父親を亡くした。それを機に実家の遺品整理を行った際、倉庫から件の呪物を見つけたという。
　売ったら金になるのではないかと、その呪物を家に持ち帰るが、ラップ音、肩凝り、悪夢に悩まされる。
　そして、坂部はその悩みを会社の同僚に打ち明けたところ、偶然同僚が"窓"であったために高専へ報告が行く事となった。

　このように実家の整理をしていたら呪物を見つけてしまう例は多い。
　先祖に呪術師がいると、処分されないまま蔵に呪物が眠っていることがある。それを何も知らない子孫が掘り起こし、結果的に呪われる。
　こうした案件は被害者が死亡し、後の調査で判明することが大半だ。体調不良ほどの被害で高専に繋がれた坂部は、実に幸運な男と言える。

「"窓"がそれを目視したところ、異常な呪力を感じたとのことなので、呪物なのは間違いないとの見解です。ただ」

　伊知地はメガネのブリッジを上げる。

「報告と一緒に送られてきた写真を見る限り、その呪物が猿の手の可能性が高いと……」

　その言葉に間白は顔を顰めた。
　間白は生物を使った呪物の厄介さをよーく知っていた。
　3人は駐車場から車を降り、住宅街へと足を運ぶ。その中ほどに立つ5階建てマンション。3階、305号室が坂部の住居となっている。
　エントランスに入ると、端っこに蠅頭がふよふよと漂っていた。階段を登り、3階に近づくにつれて蠅頭の数は増えていく。

「やばくね？」
「呪物の呪力に釣られてるのかも」

　305号室の玄関先ともなれば、己の巣のように蠅頭が扉を出入りしていた。
　伊知地がインターホンを押すと、返事の代わりに忙しない足音が聞こえ、玄関が開いた。

「あぁ、よかった。ほんとに来てくれた」
「こちら坂部浩二さんのお宅でよろしいでしょうか？」
「えぇ！そうです。ささっ、上がってください」

　坂部は心底安堵したような顔で3人を迎えた。
　坂部は太いながらも引き締まった、しっかりとした体型をしている。しかし、頬だけが妙にやつれ、肩に乗っている蠅頭のせいで猫背気味だ。
　通されたリビングの隅っこには、4級程度の呪霊が観葉植物に体を巻き付けていた。