リテイク編〜1〜 ページ20
◽️明転。
余韻と長時間の着座のせいで、すぐに腰をあげることができなかった。その間、真っ白に何も映さなくなったスクリーンをただじっと見つめる。
幸い、この劇場には片手ほどの人数しかいない。
誰にも邪魔されることなく、深呼吸をしながら体の緊張をほぐす。
「ねぇ、君はどんな映画が好き?」
頭上からやけに優しい声が降ってきた。なんだかそれを無視することができず、思わず振り返ってしまった。
♦︎♦︎♦︎
「そもそも、今までの人生で映像作品そのものに触れてこなかったから。こういうのは良し悪しに関わらず魅入っちゃうんだよね」
「へぇ、えっじぁ、これも知らん感じ?」
虎杖は一番手前にあったDVDを手に取り、間白に見せた。魔法の世界を舞台にした某有名映画だ。
「名前だけは知ってるけど、内容は全然知らん」
「まじか。じゃあ、地下室生活終わったら見ようぜ」
「いいよ。楽しみにしてる」
虎杖悠仁は少年院の任務で死亡したことになっている。生き返り、今は高専の地下で匿われていることを知ってるのは検死室に居合わせていた、五条、夏油、家入、伊知地、間白の5人である。
なぜ、間白がその場にいたのかは単純明快。これも上層部の嫌がらせだった。
息のかかった補助監督が間白に「家入女史が君に用があると言っていた。検視室にいるから今すぐに行ったほうがいい」とホラを吐いた。
間白を殺したい処刑派と生死を問わない過激派。
今、彼らは間白を直接殺せない。なら。自分から死んでもらうしかない。心を壊す魂胆で、間白に同級生の死体を直接見せつけようとしたのだ。
「伏黒と釘崎は大丈夫そ?」
「大丈夫なわけないでしょ。何度ネタバレしたい欲求に駆られたことか」
「そっか……」
「んじゃ、そろそろ時間だから失礼するね。修行頑張って」
「おう、またな〜」
間白は地下室を後にした。
階段を上り切った先の扉を開けると、夏油が待ち構えていた。
「A、悠仁の様子はどうだった?」
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作者名:四畳間 | 作成日時:2023年12月7日 17時