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◽️夏油は深いため息を吐き、親指で額を揉む。イラついた時に出る癖だ。
「上層部はAの処遇について、三つ巴状態になってる。高専の管轄になっても、どこかの派閥が何かしらの工作はしてくるだろう」
「三つ巴?」
家入の疑問に五条が答えた。
五条曰く、「受肉体としての危険性を重視した処刑派」「術式によって生じる利益を優先した慎重派」「"猿の手"として運用したい過激派」の3つの勢力ができている。
一応、五条家や東京校は慎重派に属している。
理由は2つ。1つは、珍しく上層部の中でも意見が割れているため、間白と関わることになったからには派閥闘争に参加せざる負えないから。2つは、間白Aの生存が前提となっている唯一の派閥だからである。
そもそも、間白が上層部の目に留まったきっかけは術式だった。
呪術師は原則、呪霊・呪詛師の討伐が遂行されるベき最優先事項である。時と場合によっては周りを気にしている余裕はない。そのため、戦闘の際に周りの建物やインフラを損壊させることが多々ある。実際、その修復費用は呪術界全体の支出の大半を占める。だが、彼女の術式はその修復費用を大幅に浮かせることができる。
その事実に気づいた途端、上層部はどこの家に間白を引き入れるかで取り合い合戦を始めた。その最中に今まで息を潜めていた"猿の手"が姿を現し、同時に受肉体と判明した。
"猿の手"の暴れっぷりは凄まじく、間白の世話を担当していた家の呪術師を急襲。援護に来た呪術師も含め、家の壁や支柱へ磔にして戦闘不能にした。
こうして、手がつけられなくなった上層部は五条と東京校に管理を丸投げした。
「全く、管理丸投げしたくせに口出しだけは一丁前だよ」
「そういえば、悟はもう彼女にあったんだろ?どんな子だった?」
「想像以上に面白い子だった。"猿の手"が暴れたのもAと相談した上で決めたらしいよ。完全に共生してんの」
と五条は喉をククッ、と鳴らしながら笑った。
「それに、なんだか懐かしい感じがするんだよね。よくわからないけど」
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作者名:四畳間 | 作成日時:2023年12月7日 17時