〜終〜 ページ14
◽️車内は気まずい空気になっていた。
「あー、間白。お腹空いてね?前に来た時に牛タン食ったんだけどめちゃくちゃ美味くてさ」
「虎杖。そこの店、もう閉まってる」
「じゃあ、冷やし中華のとこは?」
「そこも閉まってる。ここの近くじゃチェーン店ぐらいしかねぇ」
ここで、間白はある店を思い出した。
「そこを右手に曲がってまっすぐいくとファミレスがあったはず。そこに行きたい」
「ファミレスでいいの?」
「うん。ちっちゃい頃からそこのファミレス行ってみたかったんだよね」
「新田ちゃん飛ばして!」
「了解っス」
──何を今更、あの家に拘っているんだか……。拘りはないと思ってたけど。案外、キツイな……。
伏黒の認識は正しかった。
間白に実家はないし、仙台出身でもない。
いや、正確に表現するなら
間白がどこで生まれ、どこで育ったかという情報が書き換えられた。生まれてすぐに捨てられ、そのまま施設で育ったということに。
この事を間白自身は自覚している。
目的を達成するために、間白は自らの手で自分の歴史を捨てたのだから。
10月31日まであと7日。
刻一刻と迫るタイムリミットに間白は今だけ目を背けた。
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作者名:四畳間 | 作成日時:2023年12月7日 17時