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〜3〜※挿絵あり ページ13

「親の姿になろうとしているのか。確かに、突然現れた実家の風景に、親の姿。大抵の子供はそれに思わず返事しちゃうか」

 おそらく、呪霊は対象の記憶の中から実家の風景を模した簡易的な領域を作り、その親の姿を模倣している。これに油断し、呪霊の言葉に何かしらの返事をすると攻撃されるのだろう。だが、間白は親の顔を知らない。声を知らない。間白とこの呪霊はすこぶる相性が悪い。
 そのまま、間白は無視しながら呪霊に近づく。

「A!!」

 呪霊の頭が弾け飛んだ。
 これが、釘崎の芻霊呪法の仕業だと気づくのに数秒かかった。
 主人を失った領域は崩れ、間白と釘崎はあの踏切の場所に戻っていた。

「案外あっけなかったね」
「あっけなかったね、じゃねぇ!呪霊にふらふら近づいて。心配したじゃない!」

と釘崎は間白の頬を抓る。



「ごふぇん、ごふぇんって」

 一応、これで仕事は終わったが、間白は1つやっておきたいことがあった。


♦︎♦︎♦︎


「間白、平気か?」
「平気。少し緊張してるだけ」
「俺も緊張してきた」
「アンタが緊張してどうすんのよ」

 新田の車は間白の実家へと向かっていた。
 せめて、家の様子だけでも確認したいと言う間白の珍しい我儘であった。
 新田も家庭事情が複雑なことは知っていたため、断ることはしなかった。

『目的地に到着しました』

 カーナビの音声が流れた。
 画面には赤いピンが入力した住所の土地に立っている。

「そう……。こういうことになったか」

 車窓から見える更地。
 間白はポツリと呟いた。
 車を降りると、「売り物件」と書かれた不動産の看板見えた。さらに地面には3軒分の建物の地縄張りがされている。

「間白……」
「こんな可能性は、考えてなかったわけじゃない。けど……」

 唖然と喪失感。
 間白にとって、この家は絶対不変に存り続けるものだと思っていた。
 何があったのかはわからない。実の親は向こうにとっても、間白にとっても赤の他人同然。家が亡くなった事情はこれから先も知る由もない。もう、間白には関係のないことだ。

〜終〜→←〜2〜



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作者名:四畳間 | 作成日時:2023年12月7日 17時

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