飛蝶 - 最愛の人 - (ページ48)

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考えてもダメだ…

中に入れば、玄関には、高そうな革靴が丁寧に揃えて置いてあった。

消したはずの電気の仕業はお兄ちゃんか…

鍵をかけて出掛けたのにどうやって入ったんだろう。

リビングに入るなり、

神『あ、おかえり』

「…ただいまって、なにこれ」

神『あぁ、物少な過ぎたから買いに行っててん』

「はい…？」

空間があった部屋に、ソファとテレビと小さなテーブルまで置いてあって。

神『鍵も大家さんがスペアキーくれた。無くしたとき用にちゃんと貰っとかなあかんで？』

前にここを出た時、スペアキーも返したから、戻ってきてから貰いに行くのを忘れてたんだった。

神『あれ？反応薄いな、嬉しない？』

さっきの結愛さんとの会話と、兄の突拍子も無い行動に温度差がありすぎて思わず固まる私。

神『…なんかあった？』

「、ううん。でも、これ本当にいいの？」

神『うん。まぁ、妹のためやし？おかんも心配してそこに置いてあるの持ってけって』

シンクの上には積まれたタッパーがあって、私が好きだった母の手料理が入っていた。

神『…A？』

この料理とお兄ちゃんの姿を見て、もしかしたら、今日の結愛さんの話の事で迷惑かけるんじゃないかって…

そう思うと怖くなって…

誰かに知られちゃった以上、何も起きないまま終わるはずないんだ…

「お兄ちゃん、お母さんにありがとうって伝えておいて」

神『俺が言うより、本人が言うた方が嬉しいと思うけど』

「うん…でも、今は行けないから、」

家族には迷惑かけられない。

お母さんには特に。

ただでさえ大変な時だから、問題を増やしたくない。

だから、どうにかしなくちゃ…