飛蝶 - 最愛の人 - (ページ37)

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母親が再婚して、一人になった私は、進学せずに就職した。

初めの職場は上司の嫌がらせですぐ辞めて、次の職場も馴染めずに続かなかった。

転々とする職場、やっとマシな所が見つかったと思ったのに、クビになって。

働かないと生活はできなくなるし、仕事ばかりしていると友達と会う機会も減って、連絡すら取らなくなった。

寂しさを埋めるかのように付き合った男に、借金の連帯保証人にされてしまうし。

誰にも頼れない人生にうんざりしてた。

小『それを認めるんがそんなに嫌…？』

確かに、あの人と付き合ってた頃は毎日楽しくて、初めて家族以外の愛を知った。

どこに行ってもあの人となら笑うことができて、
この人なら好きになっていいかもって思えた。

それなのに、神様に裏切られて別れることになって。

また、ひとりぼっち。

小『Aちゃんが嫌いなのは濵ちゃん？それとも、自分？もうそろそろ、素直になってもええんちゃうかな』

私の蓋した心に問いかけるように、小瀧さんの声が胸の奥へと響く。

「…小瀧さんには分からないです。私みたいにどん底を生きてきた人間の気持ちなんて」

小『わからんやろうな』

顔を上げれば、少し怒った表情の小瀧さんが私をジっと見つめて。

小『そんな気持ちわからんでええ…。やから、俺らに頼ってや。忘れるくらい、頼ればええやん。』

今までそんなこと誰にも言われたことなかった。

人に頼るとか、人を信用するとか。

私の知らない言葉…

小『濵ちゃんがここにAちゃんを連れて来いって言うたんは、そういう意味やから。』

きっと、最初からわかってたはずなのに。

優しくされる度に自分を守るために聞こえないふりして。

結局、最低なのは私の方なんだ…