飛蝶 - 最愛の人 - (ページ29)

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次の日。

ヘアメイクが終わって、着替えようとワンピースに袖を通したのはいいものの。

背中のファスナーに手が届かず、10分くらいずっと苦戦している。

もう部屋を出ないといけない時間なのに、このまま出るわけにも行かなくて…

どうしようかと慌てていると、

コンコンっ、

小『Aちゃん、もう出るって』

「あ、はいっ。準備はできてるんですけど…」

『なんや、行けへんとか言わんやろうな』

「違うの、ワンピースがっ…」

『はぁ？なにをトロトロしてんねん』

「あっ……」

勝手にドアを開けた彼が
小瀧さんに見えないうちに部屋に入って、

『髪、持って』

長い髪を片方にまとめて持てば、器用にファスナーを締めて、

「、冷たっ……」

鎖骨に触れた冷たい感覚に手を添えると、

「ネックレス……？」

小さな紫の蝶々が付いていて、シンプルなワンピースによく合ってる。

『自分に合う色なんやろ』

…覚えてたんだ

『大人になったんやな…』

私を見る彼が、あの頃と重なって見える。

私の首にマフラーを巻いてくれたあの時と…

昔とは違う関係に、あなたはどう思っているのだろうか。

別々になったあの日から、何年も経って。

私たちは間違いなく、大人になった。

『時間ないから』

「…うん、」

そして大人になった今でも、隣に居ることが不思議でたまらない…