飛蝶 - 最愛の人 - (ページ17)

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「ねぇ、崇裕」

『ん、』

「お母さんがね、再婚するんだって。良い人みたいでさ。でも、ヤクザって言うのが引っかかるんだけど…、」

『…は？今なんて、』

「お母さんが再婚する人が違う町のヤクザの組長なんだって。今度、会うんだけど、一応伝えとこうと思って。」

付き合って数ヶ月、お互いに隠し事はあんまりしないタイプだから。

こういう事も言っといた方がいいのかなって。

『Aはどうするん』

「私？将来のことも考えて、お母さんの旧姓のままでいるつもりだけど…？今のアパートに居るって言ったら、お母さんもそれでいいって」

いつもなら、もう少し反応してくれるのに
今日に限って黙り込んだまま。

別に知らなくてもよかった話だったかな…？

『…なぁ、A』

「…ん？」

『俺もいずれ、その人らと同じになる』

「え……？」

『このまま俺と居れば、Aは間違いなく複雑な立ち位置になる。親の対立する組の女って知られれば、相当な問題になるやろうなぁ』

待って、それじゃ……………

『母親の味方になるか、俺の傍におるか。Aはどっちにしろ選ばなあかん時が来る』

「…そんな、」

『決めるなら今や。手遅れなる前にな。』

私は、この人の事を好きになりかけてた。

強引だけど、どこか優しさがあって、猫みたいに気まぐれだけど、私を愛してくれた。

でも、唯一の家族である母を見捨てたら
きっと母は新しい家庭に居ずらくなる…

もし、彼が普通の人間ならずっと一緒に居たのかもしれない。

貴方の女で居ることを望んだかもしれない。

だけど、こんなに複雑なら好きになる前に手放してしまった方がいい…

「…ごめん、崇裕…………」

私には母を裏切る勇気はない…

「別れよう、」

たった数ヶ月の淡い記憶。