飛蝶 - 最愛の人 - (ページ9)

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小『あ、一個気になってんけど玄関のでっかいダンボールなに？』

「…えっと、仕事クビになっちゃって。その荷物です。」

小『なるほどな。なら、そっちのが好都合かもな』

「え…？」

小『これ、Aちゃんにはええ条件やと思うで？』

渡された一枚の紙。

契約書か何かで、上から下まで読むと、

「…あの人の所で働くということですか？」

いくつか項目が書いてあって、仕事的にはお手伝いさんみたいなこと。

小『俺らみたいなのは機密が多いから他所から人呼べへんねん。いっそうのこと組の人間になってもらうしかなくてな。それなりの額は出るし、勝手に返済分は引かれるから楽やろ？』

職を失った私からすればそれは魅力的な話かもしれないけど…

「でも、なんで私が…？」

小『さぁ？濵ちゃんの判断やでなぁ。』

あの人の判断って…

「この、専属というのは…？」

小『もちろん、濵ちゃんの専属ってこと。たまに女手が必要なときあるからな』

「女手…」

ハッキリと書かれていない仕事内容に不安を覚えるけど、この話を逃せば、職が見つかるまで生活だって苦しくなる…

小『住み込みやから家賃とかもいらんし。てか、AちゃんがOK出さんだら俺ボッコボコ』

「え、」

小『うそうそ(笑)もちろん働くやろ？』

さっきまで、どん底だと思っていた分、この話は私にとって好都合に見えた。

ただ一つ…

あの人の元で働くということ以外は。

返済するまでの我慢…

そしたら、全てから解放されるんだから。

「わかりました、」

過去のことは一旦忘れて。

「働かせてください」

やってみるしかないよね。