飛蝶 - 最愛の人 - (ページ41)

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次の日の朝。

小『荷物こんだけ？』

「…はい」

荷物を小瀧さんに渡して、出発する時間。

小『ごめんな、濵ちゃん一緒やなくて…』

「いえ…、あの人も忙しいし」

改めて外から見ると、本当に大きな家で、自分が居たことが不思議なくらい。

小『…ほな行こか』

「はい」

車に乗るのも最後。

振り返ることも無く出発した車は、山道を抜けて懐かしの道へと続く。

段々、アパートが近づくにつれ何度も考える。

小瀧さんとあの人が私にしてくれたこと…

強引だったかもしれないけど、助けてくれたことに違いはない。

小『着いたで』

静かな住宅地にあるボロいアパート。

そこに止まる不自然なほど高級な車から降りれば、荷物を受け取って、

小『短い間やったけど、元気でな』

かける言葉が見つからない私の頭にポンっと手を置いて、小瀧さんの背中が遠くなる。

こういう時に限って、なにも言えなくて。

車に乗り込む小瀧さんを引き止めることもできなかった。

自由になったはずなのに、どこか空っぽで。

折れた羽は治らなかった。