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弐拾壱 ページ23

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混戦を避ける為、時間遡行軍と距離を取った卯月達だったが、だからといって有利に事が運べる訳ではなかった。

寧ろ、遡行軍の出現により、それまで厄魔討伐を行っていた山姥切と三日月がその場を離れた為、状況は先程より悪化していた。


「あー、くそっ!此奴らどんだけ湧いて来るんだよ!」

「くっ、キリが無いな…」


数の多さに苦戦しつつも着実に厄魔を討伐していた政宗と成実だったが、どうやら体力の消耗も激しいらしい。

二人の隙をつき、厄魔が卯月へと襲い掛かった。


『っ!!』


卯月はギリギリでそれを躱すと、懐から手早く短刀を取り出し、次なる攻撃を防いだ。


『…っはは、こういう接近戦は、あまり得意では無いんだがな…っ!』


笑ってはいるが、この状況には流石に危機感を感じているらしく、その頬には冷や汗が伝っている。

防いでいた攻撃を弾き、何とか距離を取ると同時、目の前の厄魔の頭を刃が貫いた。

厄魔が倒れると、荒い呼吸を漏らす政宗の姿が見えた。

月牙族であってもこの数は苦しいらしく、苦々しげに顔を顰めている。

そんな政宗と、力強く厄魔を斬りつつもその顔に焦りを浮かべる成実を交互に見ると、卯月は何かを決心した様に、再び政宗へと視線を向けた。


『──…政宗、私の血を飲め。』

「は…?」


突然何を言い出すのかと目を丸くする政宗に、卯月は真剣に続ける。


『月牙族は姫神子の血を飲むと本来の力を発揮できると聞く。』

「だが、お前は姫神子では無いだろう。」

『………姫神子は私の姉だ。私は彼女と同等の血を持っている。』

「!!」


卯月の言葉に、政宗は目を見開いた。

その様子に、卯月は何故か哀しげな笑みを浮かべた。

そして、再度言葉を紡いだ。


『政宗、私の血を飲め。そうすれば、この状況を打開できるかもしれない。』

「……ああ。」


政宗は小さく返すと、そっと、卯月の首筋に牙を立てた。


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夜霧 - 面白い (2018年6月24日 15時) (レス) id: d12e91b5f7 (このIDを非表示/違反報告)
ユキナ - おもしろかったです♪更新頑張ってくださいねq(*・ω・*)pファイト! (2018年3月10日 16時) (レス) id: 0f45599fe0 (このIDを非表示/違反報告)
お母さん(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください! (2018年1月8日 2時) (レス) id: 335a7d9d6b (このIDを非表示/違反報告)
銀狼(プロフ) - とても素晴らしい作品ですね!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2017年12月25日 16時) (レス) id: a78c622004 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:クレイン | 作成日時:2017年12月25日 15時

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