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「はい!じゃあ手続きも終わったし、ホントに帰って」
そういってAちゃんは席を立ってまたカウンターからどこかに行ってしまおうとするから。
思わず、その腕をつかんだ。
「ちょ…っ…何…?」
離して、と暴れるAちゃんをつかむ手の力はそのままにAちゃんをまっすぐ見つめる。
「また、来ていい?」
「へ…?図書室なんだから自由に出入りしたらいいじゃない?」
「いや、そうじゃなくて」
また本のこと話してよ、と言えば困ったような顔でしばらくうつむいて。
「……本のことなら」
戸惑うように瞳は揺れていたけれどその答えは俺を拒絶するものではなかった。
だから。
「ねぇ、Aちゃん」
「何?……付き合わないからね?」
いつも俺がいう、歯の浮いたような『好き』とか『運命』とかそんなことがを警戒して先手を打ってくるAちゃんの腕をそっと離した。
そのままAちゃんは、図書室のカーテンを閉めに行ってしまって。
ああ、やっぱりたかが本一冊くらいで仲良くなれたかも、なんてとんだ思い上がりだと自戒をこめて、所構わず好きだなんてAちゃんにも悪いことをしたとぼんやりと窓の方を見つめていると…。
「藤ヶ谷太輔」
窓際でこちらをみるAちゃんと目が合った。
逆光であまりその表情は見えなかったけれど、でも確かにその口元は少し上がっていて…。
「友達、ならなってあげてもいいよ」
そのうちね!と今度こそ笑顔になったAちゃんは最後のカーテンを閉めようとくるりと後ろを向く。
初めての、笑顔だった。
いつも嫌悪感とか無関心とかそんな目でしか俺を見てこなかったAちゃんの初めての笑顔。
その笑顔を見た途端に…。
―とくり
―とくり、とくり
なんだか心臓が苦しいような、痛いような不思議な感触。
生まれてからこの方感じたこともない胸の痛みとおさまらないどきどきに耐えていると…。
『本気で好きになったってことじゃないの?』
何日か前の渉の言葉が頭の中をぐるぐるとまわりだす。
くるくるといろいろな表情をするAちゃんに、興味があった。
俺につれないその態度を変えてみたいとすら思った。
それはただの好奇心。
だと思っていたのに。
「どうしたの?藤ヶ谷太輔」
「…お前、友達なんだからその呼び方やめろよな」
ほら、太ちゃんって呼んでみ?と言えばやだ!と笑って。
「…藤ヶ谷君」
Aの笑顔にまた胸がぎゅっとして、これが『恋』なんだと知った。
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めろんぱん(プロフ) - 由貴さん» コメントありがとうございます!お話はもう少し続きますが、気長におつきあいください(^-^*) (2015年3月15日 2時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
由貴(プロフ) - 面白いです(///ω///)♪ (2015年3月15日 0時) (レス) id: 08fed4a8fe (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - ふうたさん» コメントありがとうございます!気分屋なので不定期更新になってしまってすみません(_ _)宮っちは密かにがっつり書いてみたかったのでお兄ちゃん兼友人として満喫中です(^-^*)これからもよろしくお願いします! (2015年2月25日 5時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
ふうた(プロフ) - 前作から読ませていただきました!今回のお話も大好きです。夜に更新されてるかな?て時が1日の癒しの時間です。みやっちみたいな男友達が居たらいいなと思いながら楽しみにしています! (2015年2月24日 23時) (レス) id: b28de98085 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - めーるさん» コメントありがとうございます!一癖もふた癖もある人ばかりなので一筋縄ではいかないお話になりそうですが、楽しんでいただけたらうれしいです(^-^*) (2015年2月4日 23時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2015年1月22日 0時