匠の技、届けます。(3) ページ32
「カァァア!シュウゲキ!!シュウゲキィ!!“モトオモイバシラテイ”ニシュウゲキィイ!!」
響いたその声に、思わず手に持っていた刀を取り落とした。
“オモイバシラ”__思柱。
共に柱として戦い、育手となった友の事だ。
彼奴の屋敷は、すぐ傍の里にある。
「行ってくる。必ず、帰る。」
弟子達に、そして自身に言い聞かせるようにそう言った後、刀を拾い、即座に走り出した。
深く呼吸をし、足に集中させる
もっと__もっと、もっと速く
ひたすらに足を動かせば、直ぐに屋敷が見えてきた。
破壊された門にゾッとする。
しかし、確かに__彼奴のと、鬼のと、そして……恐らくこれは、拾ったと言っていた子供の匂い。
少なくとも、まだ死んでいない。
匂いは縁側の方だ。迷いなく進めば、刀を構えた子供と、鬼がいた
「ッ!?」
その鬼の目には、“下弦弐”と描かれていた。
まず、あの子では敵うはずが無い。しかも、持っているのがあの刀だと言うことは、彼奴は立てない程の怪我を負っている事になる
間に合うだろうか?否、間に合わせなければ。
その一心で刀に手を掛けた。しかし、鬼も子ももう動き出している
直後。
構えられた刀が光を帯び、瞬きすら出来ぬ内に振り向かれた。
「__旋空」
伸びた斬撃は、子の言った通り、孤月が旋るように見えた。
それが吸い込まれるように鬼の首を狙い__
そのまま、刈り取ってしまった。
刀を納め、転がった鬼の頭に歩み寄った子は、
「だから言ったでしょう。勝つ、と」
そう笑いながら、鬼の顬を啄く
「ここの出来が違うんですよ
私ね、やろうと思って出来なかった試しがないんです
……まぁ、出来るまでやっているだけですが。諦めが悪いとも言えますね?」
ひょいと立ち上がるとその子は、此方へ振り返った
「あの、天狗の面の方。
鱗滝様とお見受けします。手当を。手伝って、頂けますか」
気付かれていた事に驚く一方、自分に向けられて初めて彼女の明るい声が虚勢によるものだと気付いた。
「勿論だとも」
僅かに涙を滲ませながら頷き、彼女は中に駆け込んだ。
それを追えば、血に塗れた彼奴が見える。
子の隣に膝を着くと、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「たく、み。凄かったよ……。
ふふ、刀、使えたんだね。格好良かった」
天職だと思ったんだが、どうも私は強過ぎたらしい。[鬼滅の刃×暗殺教室]→←匠の技、届けます。(2)
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作者名:杏 萌葱 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月27日 22時