匠の技、届けます。(2) ページ31
「夜には鬼が出る」
そうおどけたように、私に言い聞かせていた。
だから、外へ出てはいけないよと。
嘘のような話だ。
けれど、彼の瞳が、嘘では無いと語っていた。
「__あぁ、知ってる」
その彼が、“赤”に塗れながら膝をつく。
この光景、
私のこの、やるせなさ。
……嫌と言うほど知っていた。
「お前、鬼だろ?」
私を守ろうとしてくれた意志を、彼の今まで歩んだ道を。
嘲笑う様に、彼に止めをさそうとする怪物に、躊躇いなく声をかけた。
振り向いたそいつは、真底楽しそうに私の言葉を肯定する。
逃げろと掠れた声で言った彼に、
「護ってくれてありがとう。」
そうとだけ笑って言って、傍の床に刺さっていた彼の愛刀を抜いた。
「んん?お前、稀血か?……はは、良いぞ!!どうせ俺が勝つからな、相手をしてやろう」
身体を起こした鬼に、今以上に笑みを深めて言った。
「あら。私が勝ちますよ?当然でしょう」
一瞬にして殺気立つ鬼を見据える
鬼と戦っている時、彼は刀にトリオンを纏わせていた。
「……なら、問題ありません」
私にも出来る。
襲いかかってきた鬼を最小の動きで避ける。
そのまま身体を捻るように、片足を引きながら振り返った。
勢いを乗せて思い切り振り抜いた刀が、光を帯びながら伸びる。
「__旋空」
一瞬にして鬼に迫った斬撃が、その首を飛ばす
彼が、鬼が、息を飲んだ。
「だから言ったでしょう。勝つ、と」
歩み寄り、転がった鬼の頭の、顬を啄く
「ここの出来が違うんですよ
私ね、やろうと思って出来なかった試しがないんです
……まぁ、出来るまでやっているだけですが。諦めが悪いとも言えますね?」
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作者名:杏 萌葱 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月27日 22時