短編集 (ページ36)

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ymcn

「充電させて」
「え？」
「じゅーでん」
「えっ、わ、！」

勢いよく抱きしめられて焦る。
楽屋なのに。
みんないるのに。
でも力が強すぎて離れられそうにない。

「ちょっと、どうしたのさ」
「充電だってば」

みんなのいる前で…って言おうと思ったけどやめた。
たぶん涼介は僕だけにこうやってきてくれたんだもん。
しょうがないなぁって背中に腕をまわすと、へへって笑い声が聞こえた。

〈山田ー、知念ー、もう行くよー〉

宏太の呼びかけに返事をして、離れようとしたが

「涼介、もうスタンバイだって」
「うん」
「行かなきゃ」
「うん」
「…ちょっと」
「ちぃちゃん怒んないで、本当にあと少しだけ」

そう言った涼介が勢いよく息を吸う。
その瞬間に変な匂いしてないかすごく焦ったが、涼介はちぃの匂いだってでろでろした声で言ってくる。

「それやめてって言った」
「でも充電」
「なんでもそう言えばいいと思ってるだろ」
「えー？そんなことないよ」

って言いながらもう一吸い。

「ちょっ、と！」
「ちぃちゃんが足りないんだよ」

胸元にいる涼介が僕を見上げて言う。
そんな顔されたら、

「はは、ちぃ困ってるでしょ？」
「…わかってんならやめて」
「むーりー」
「もう！」

隙を見て離れて楽屋を出る。
バタバタと騒がしい足音がするから涼介もきたみたい。

「ちぃ、ごめんね？」
「……………」
「えぇ……無視ですか……」

本当にこいつは。
好きって気持ちは厄介だ。

「…涼介のご飯食べたい」
「え！俺ん家来てくれんの！？」
「ご飯食べにね」
「やった！」

まあ僕も足りてないし、充電です。

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