5つの星と転生令嬢～ごく普通の高校生(彼氏持ち)がお嬢様になっちゃった！？～ (ページ9)

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8話ページ9

魔法。

それはこの国を大きく発展させるものであり、国を滅ぼす災いともなるもの。

体の中に「魔力」を宿す者のみが使える奇跡にも近い現象。

それゆえ、魔法の重要性を重んじたこの国ではそれを扱う者を魔法士と呼び、代々重宝してきたのである。

魔法には、「火を灯す」「水を生む」など簡単な魔法(といっても、習得は中々難しい)から、「物体の破壊や生成」「空中飛行」などの一流の魔法士でも扱うことは難しいものもある。

勿論、どの魔法においても規模が小さいと簡単であるし、大きなものだと難しい。

それは言うまでもないだろう。

...まあ、だからこそ私はこうして彼女達に尋問されている訳だが。

「一体どういうことですの？」

開始早々、大きいレイシュアの叫び声に庭園にいた生徒の殆どがこちらを振り向いた。

だが、それすらも厭わずに彼女は続けた。

「長く、A様のお傍にいた私ですら知りませんでしたが、婚約者であられますロレンツォ様は勿論ご存知でございますよね？」

いや、そこ？

結局、そこなんですか...？

「知らない筈ですわ。これを知っているのは家族と一部の使用人ですもの」

私だってまさか、こんな事で秘密がバレるとは思ってなかった。

「...何故ですか！？この事をお教えすれば、ロレンツォ様も必ずA様の元へ戻って参りますのに！」

それを聞いた途端に彼女は目を見開き、私に向かって吠え始める。

取り巻き令嬢方も皆、ビクビクしてしまっている。

「どうしてですか、お答えください！A様！」

「...魔法で振り向いたとしても、それは私自身を見てくださってるわけではありませんもの...」

ぽつぽつと、どこか小さな声で自分の思いを明かす。

何故でしょうね。

記憶が戻った今、そんな卑怯な事で人の愛を受けようとは思わないのよ。

「...私はね。レイフォード公爵家の長女に生まれた身として、自由な結婚は出来ない。それが許されていない。...無償の愛を求めることは出来ない」

レイフォードは国の筆頭貴族。

私の婚姻が国の情勢すらも動かす。

けれども－

「でもね。もしも叶うのならば......私個人を見てくれる人と結婚したい、と思うのはいけないことなのかしらね...」

悲しい思いで言葉と涙が溢れた。

そこには早々にも「社交界の若き華」と呼ばれた完璧な淑女らしい面影などひとつもなかった。

ただ恋に、将来に悩む、一人の14歳の幼い女の子がいただけだった。