5つの星と転生令嬢～ごく普通の高校生(彼氏持ち)がお嬢様になっちゃった！？～ (ページ2)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:21,815 hit

1話ページ2

思い出した。

これは、前世の記憶。

私、あの時車に跳ねられて死んだんだ。

病院に運ばれた後のかすかな記憶の中で、父と母が泣いていたのを覚えている。

代わりに血みどろになった私を心配してくれた彼氏も今はもう顔を見ることもないのね。

ああ。

思い出すだけで、体の震えが止まらない。

もう二度と死を見たくない。

そう思ってしまう...

「A様！」

え？

突然、叫び声と共に入ってきた人物に驚く。

「起き上がって...お身体は大丈夫なのですか！？痛いところはありませんか？喉が苦しいとかは...」

「ちょっと待って。何のこと？」

「覚えていらっしゃらないのですか？お嬢様は三日前のパーティの最中、倒れられたのです」

「え、ええ...覚えていないわね。倒れていたせいで記憶が抜け落ちているのかもしれないわ」

「まあ！！それは大変です！旦那様に報告しなくては...」

「え？いえ、そんな大事では...。ま、待ちなさい！シェイナ！」

「いいえ！記憶が抜け落ちたとなれば大事です！お嬢様！！」

「寝ていた三日間の記憶が抜け落ちただけよ。痛いところもないし。問題ないわ。本人が言っているのだから大丈夫よ」

「本当、ですか？痛いところもありませんね？」

「ないわよ。そんなに私のことが信じられないの？」

じとっと、軽く睨んでみせるが彼女は気にする素振りも見せず、私をベッドから起こした。

「いいえ！そんなこと！では...怪しいところですけれど、早速、湯浴みを致しましょうか。レイフォード公爵様のご令嬢として、日頃から美しくなくてはなりませんから。汗でベトベト、なんてことがないように！」

「そ、そうね」

ああ、そうだ。

私は今世ではこの国の貴族レイフォード公爵家の令嬢なんだった。

セイシャナル王国で王族の次に高い地位を持つ公爵家筆頭の家柄の娘。

そして、記憶が戻った今でこそ言えるけれど。

この世界は私が前世で遊んでいた『星とプリンスたち』という乙女ゲームにそっくりなのよね...。

ヒロインに転生出来たらよかったものの、私が転生したのは悪役令嬢、A・レイフォード。

貴重な魔術が使え、第2王子の婚約者になったお陰？で、我儘な性格は止まることを知らない。

使用人は逃げるし、最終的に婚約者には振られるし、散々なお嬢様だ。

あれ、でも確か、婚約破棄って私が15の時だから...

後、半年もない！？