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夏恋が私の部屋に入るのは


久しぶりだった。





中学のときはしょっちゅうお互いの部屋を


行ったり来たりしていたし、


高校受験の直前の一ヶ月は


この部屋で夏恋とずっと勉強していた。





『Aと同じ学校に行きたい』




それだけの理由で見たことが

ないくらいがむしゃらに

勉強する夏恋に、

わたしも必死で付き合って勉強を教えた。




『Aも勉強しなきゃいけないのに、ごめんね』




夏恋はよくそう言っていたけど、


でも


わたしも夏恋に教えることで、


知識が自分に確実に定着しているのを


感じていたから、


全然問題なかった。





合格発表を一緒に見に行った時のことを


思い出す。





試験のあとに行った、

自己採点の結果でも

夏恋はギリギリだった。



だから、



発表を見に行くのを怖がって、


夏恋は掲示板が見えた時点で足が


止まってしまった。





『ダメ、怖くて行けない、A見てきて』





でも、


わたしには予感があった。


夏恋が落ちるわけがない。




だから。


わたしは引きずるようにして、


夏恋を連れて行って、


一緒に掲示板を見たんだ。





夏恋の番号を最初に見つけたのが私で


『あったよ!あった!』


って叫んだら、夏恋が


『うそうそうそうそ!』


と掲示板を食い入るように見つめた。





そして、


自分の番号を見つけた途端に、



『A!!やった、同じ高校に行ける!』


って抱きついてきた。





でも、


わたしはそのとき、


まだ自分の番号を確認してなくて、


慌てて夏恋と一緒になって私の番号を探した。



『あった!Aの番号もある!』



当然のようにわたしの番号も把握している夏恋が、

ひと足先に掲示板の中から

それを見つけ出した。





『A!やった!』





夏恋が今度こそ本気で私の首に

しがみついてきた。





『一緒の高校に行ける!また一緒だよ!』





ふたりで抱き合って飛び回った日のことが、


なんだかとても昔のことのようだ。





いつからか、


わたしは夏恋に引け目を感じるようになり、


自分は夏恋がいなければ光ることの出来ない


星だと思うようになった。





でも、


それは夏恋のせいじゃない。





自分で光るための努力を


しなかった自分のせいなのに。





ああやって、2人で助け合った日々のことを

思い出したら、

夏恋は何も変わっていないと分かるのに。

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作者名:ゆーか | 作成日時:2018年1月23日 19時

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