片寄涼太 Stellar…涙 4 (ページ16)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:100,768 hit

162 ページ16

夏「その前から、

何回か涼太がAの写真撮ってるとこ

見たことあったんだよね。

Aを見つけるとすぐに

声をかけないで、

しばらく様子を見てるわけ。

で、

その様子を写真に撮って、

それから声かけるの。

Aは写真撮られてるなんて

気づかないから、

すごく無防備でさ」

写真を撮られてるなんて、

考えたこともなかったから、

全然警戒してなかった。

夏「だからそのとき、

涼太に

『ストーカーみたいなことしてるってAに言いつけるよ！』

って言ったんだよね。

そしたら、

涼太慌てちゃって

もう必死でわたしの腕つかんで、

ちゃんと説明するからって」

わたしが見たのはちょうどその時

だったんだろう。

わたしはてっきり、

涼太くんが告白するために、

夏恋を連れて行ったのだ

とばかり思ったのに……。

夏「で、涼太が

このアカウントのことを教えてくれたわけ」

フォロワーも誰もいない、

涼太くんだけのアカウント。

夏「4月から始まってるよね、

これ。

こんなときから涼太は

Aのこと見てたんだなって思ったら、

勝ち目ないなって

思っちゃってさ」

「……」

わたしは写真を1枚1枚見ていた。

『写真撮る時はいつも真剣』

『腹減ってたこ焼き待ち中』

『寝ちゃってる。本当にお疲れ様』

それは記録だった。

涼太くんが私を見つめていてくれたという、

記録。

体育祭の夜。

1人で教室の窓から

花火をするみんなを

見つめている写真もあった。

『見なくてもわかる。泣いてる。俺は星がそこにいることを知ってるのに』

わたしは胸が苦しくなった。

涼太くんは全部分かってたんだ。

現実のわたしもInstagramのわたしも、

全部見て、

理解してくれていた……。

夏「こんなめんどくさいことしないで、

さっさと告白すればいいのにって、

わたし言ったんだよね」

「……」

夏「そしたらさ、

焦る気は無いんだって言うんだよね。

Aはすごく傷つくのを

怖がってるから、

あんまりズケズケ入り込むと

嫌われそうで怖いって」

「あ……」

夏「涼太でも、

そんな風に思うんだって、

びっくりした。

あの涼太が、

嫌われそうで怖いって、

思うなんてね」

そんな風に思ってたんだ。

わたしはとにかく驚くばかりだった。

すべてが私の想像を超えている。