May ページ11
＿
超スピード決断で軽音部に入ったゆりやん。
それから1ヶ月ほどが経っていた。
ゆりやんは亜生先輩と結構気が合ってるみたいでよォ喋ってる。
ギター教えてもらったりしてたし。
なんやかんやええ感じなんちゃーぁん？
じゃあ、
そろそろ、行くか。
ふらっ、と楽譜とギターを持って、屋上に出る。
相変わらず、気持ちのいい場所。
今日も天気がいいから、最高だ。
ベンチが定位置。
最近は、ずっと中島みゆきさんの「糸」を弾いてる
けど、歌うのは決まってここ屋上。
1人の時だけしか歌えない。
＿なぜ、巡り会うのかを私たちは何も、知らない
誰にも歌ってるところを見られず、
のびのびと歌えるのが、1番楽しい。
聞かれてても別にいい。
ただ、誰かに見られながら歌うことが恥ずかしいだけだから。
心地よい風に包まれて。
ただひとりで、歌う。
「縦の糸はあなた」
健人A「「横の糸は私…」」
「…！」
「「会うべき人に出会えることを……」」
目を合わせて、息を吸って、
「「人は、仕合わせと、呼びまーすー……」」
…目が合ったまま、数秒
健人「…ほんま上手いなあ」
「健人先輩こそ…」
健人「あんな綺麗にはもれたことないねんけど」
「すーちゃん先輩は？」
健人「なんやねんそのすーちゃん先輩て笑」
「バイト先の人が洲崎先輩のこといじる時に言ってたんです
面白がって呼んでたら定着しちゃって」
俺が言うたら殺されるわー、なんて笑う。
横顔、綺麗やなぁ、なんて思って…
健人「なー、A」
「っ、はい」
健人「提案なんやけどさ…」
遠慮がちに、だけどしっかり私の目を見つめてきた
健人「俺と、弾き語りコンビ組んでくれませんか？」
それは、まるで、告白のようで
何故か照れくさくなってしまって目を逸らした。
「私？」
健人「うん。Aがいい」
「いいですよ」
健人「え？」
「え？」
健人「いや…ダメ元やってん。
歌ってって言うても歌ってくれへんからそういうん嫌かな思って」
「あ…嫌というか、人に見られて歌うことが苦手で…」
健人「…そか。明日バイトは？」
「ないです」
健人「放課後開けといて」
と、健人先輩のスマホが鳴り
ごめん、音合わせや、と去っていく。
取り残された自分に、妙に喪失感を覚えた
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作者名：七 | 作成日時：2020年4月24日 4時
