4000 ~short story~

心臓に悪い。 Hiroki.T ページ29

都築「…はぁ」




帰り道の足取りが重い。



帰る準備もダラダラして


いつもなら飛んで帰るのに、なんて拓実に言われて。



いや、だって。



喧嘩したんだもん。



きっかけは些細なことで、今思えばそんなに


お互い噛みつかなくても良かったものなのに


お互いどこか譲らない部分もあるしこだわりもあったから


ついつい自分が折れることが出来ず言い争った。





「じゃあもう別々に住もうか」なんて言っちゃって、


「そうだね」なんて言われてムカついて


「じゃあね」と吐き捨てるように仕事に向かった。



昼間、彼女がまだ仕事中の間に帰ってきて、


泊まり込みのロケだから準備して、


その脚で収録に行って、ロケ行ってまる2日彼女とは顔を合わせてない。



もちろん、喧嘩中だから連絡も一切してない。



いま考えればなんであんなにムキになってたんだろって思う。



スケジュール上、俺が出ていく感じになったけど


仕事で使うものはいくつか置いてあるから


彼女は俺が出て行ってないことは分かってるだろう。



喧嘩する前に泊まり込みのロケって言ってあったし。



それで、もう夜になったはずの部屋に


帰って来て彼女のものが何も無くなってたら


とか考えたらゾッとして、


いや、居たとしてもなんていえばいいかなんて思って…




そっと、寝てるかもしれない、とか


馬鹿みたいなこと考えてドアを開ける。




電気は、着いていない。



まぁ、無理もない。深夜遅くだから。



荷物を音を立てないように置き、寝室を開ける。



相変わらずの寝相の彼女に顔を近づけて……



……え？




え？





彼女、に見えた布団の膨らみは暗がりで目を凝らしてみれば


ただの抜け殻で、彼女はどこにもいない。




いつもは充電してるはずのスマホも枕元にない。




……まさか、




…まさかほんとにAは、



出ていった？









…どうしよう。



…何をしたらいいんだろう。




ちょっ、ほんとに…どうしたら……









ガチャッ。





じゃーーーーー…









「あれ、おかえり」



都築「うぇ？！」








トイレから出てきたA。俺は思わず、抱きしめた。、






「？」



都築「…いや、帰ってきたらAいなくて、ビックリして…

この間はごめん」



「…ううん、私こそ、ごめん」









fin.

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